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連載20 旅館事業承継 スペシャル座談会 

連載20 旅館を継いでいく次世代の経営者は イノベーションを起こさなければならない

【月刊HOTERES 2019年05月号】
2019年05月17日(金)
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19 回にわたって連載してきた「旅館の事業承継と地方創生について」では、これまで「地域一体再生」の提案を続けてきた。今後の連載は第2 シリーズに突入。よりテクニカルな要素も伝えながら、参考となる成功事例も盛り込む形で展開していくことになりそうだ。
この節目に、それぞれの立場から旅館に向けてアドバイスを送る桐明幸弘氏、大山美和氏、井門隆夫氏にお集まりいただき、地域一体再生に基づく事業承継を推進していく意味と、新時代に旅館を継いでいくための課題などについてあらためて議論してもらった。
 

 
経営を自分たちの手に取り戻さない限り
旅館を抜本的に改善することはできない
 

村上 2020 年の東京オリンピック・パラリンピック以降の景況について、どのように予測していますか。
 
大山 東京オリンピック・パラリンピック以降、不動産バブルが弾けるのではないかという話も聞かれますが、実際には既に起こっています。不動産の価格は早ければ2019 年内にも下降曲線に陥るでしょう。特に首都圏では不動産の在庫が積み上がりすぎて、リーマンショック直前の時期に近い状態、あるいは超えているとも言われています。今はオリンピックのプロパガンダによって隠されていますが、すでに反転してきていると思います。海外の投資家たちは既に日本から手を引いています。景況の現実を知らないのは日本国民だけなのかもしれません。
 
 リーマンショックと同じようなことが起こる可能性に対してリスクヘッジしておくのは必要だと思います。リスクヘッジのために新しいものを創るのはとても難しいことですから、土台があるものの中から第2 創業的な動きをする方向性がいいのではないでしょうか。そのような形での創造が日本人は得意ですし、労力もコストも少なくて済みます。
 
桐明 日本人は少子高齢化の影響を、あまりにも過小評価し過ぎていると感じます。少子高齢化は非常に大きな問題であり、いくらインバウンドが増えたと言っても、その分日本人の観光客が減ってしまっているのですから、もっと深刻に捉えなければなりません。
 
 人手不足や生産性が低いといった問題を抜本的にとらえて、その解決方法を考えるべきです。「人手が不足しているなら外国人を呼んでくればいい」などという発想はあまりにも短絡的です。今、本当の意味でのパラダイムシフトが起こっています。相当に危機的なパラダイムシフトに備えなければならず、そのための政策を打っていかない限り日本は沈没してしまいます。
 
 事業承継というのは、今ある会社を継がせればいいという話ではありません。これまでとはまったく違う形で継がせなければならないのです。
 
村上 地域一体再生によって、どのようなことが打破できるのでしょうか。
 
桐明 各旅館が抱えている共通の課題を一気に解決する、それが地域一体再生の一つの肝になります。何が共通の課題かと言うと財務的な問題で、借金が多すぎるということです。もう一つは、人材不足の問題です。小さな旅館単体ではなく、大きな経営会社がある形になれば、学校も人を送り込みやすくなります。
 
 そして何よりも経営というものが何なのかについて、しっかりと認識してほしい。これまで日本の旅館は、所有については不動産を持っていて、運営については一生懸命おもてなしの精神でやってきたのだと思います。ところが経営については、リアルエージェントが担っていたという側面があります。商品の内容と価格を決めてもらい、集客・送客をしてもらっていたのです。
 
 経営を自分たちの手に取り戻さない限り、抜本的に旅館を改善することはできません。その取り組みをしてほしいというのが地域一体再生のスキームの最大のポイントであり、その活用によって現状を打破できるはずです。
 

ネクストステージ- コンサルティング 代表
ファミリービジネス事業承継研究会 主宰
大山美和氏
Miwa Oyama

東京都出身。日本女子大学卒業。ボストン大学経営大学院MBA 修了。米国公認会計士。米系金融機関、大手会計事務所KPMG ニューヨークに勤務後、1997 年帰国して同社日本拠点の創設と主要大手金融機関の不良債権処理や事業再生アドバイザーのパイオニアとして活躍。2003 年デロイトトーマツに転籍し、企業再生に加えて国内外M&A を含む総合的ファイナンシャルアドバイザリー業務を展開し、旅館・ホテルを含めたホスピタリティー業界の対応案件に多く関与した経験を持つ。現在は独立して、旅館に代表されるファミリービジネスの経営革新や事業承継案件に数多く携わる。また、宿屋大学をはじめとする講座やセミナーなどを通して、旅館・ホテルの経営者・後継者に向けた「ネクストステージ・コンサルティング」を展開している。

㈱インテグリティサポート 代表取締役
桐明幸弘氏
Yukihiro Kiriake

福岡県出身。1980 年東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入行。90 年独立系のM&A 仲介専門会社、レコフ入社。外資系投資銀行を経て、2001 年トーマツグループのM&A アドバイザリー子会社入社。03 年監査法人トーマツにて事業再生部門を立ち上げ、ホテル・旅館などを中心に事業再生支援サービスに従事。07 年独立起業し、㈱インテグリティサポート代表取締役に就任。福岡市経営補佐顧問、神奈川県地方公社等専門部会委員、「週刊ホテルレストラン」編集委員、太平洋クラブ㈱社長などを務める。

株式会社井門観光研究所 研究員
高崎経済大学 地域政策学部 観光政策学科教授
大正大学 地域構想研究所 客員教授
立教大学 観光学部 兼任講師
井門 隆夫氏
Takao Ikado

東京都出身。㈱ツーリズムマーケティング研究所主任研究員、㈱井門観光研究所取締役として宿泊業の事業再生や地域活性化に従事。現在、高崎経済大学地域政策学部観光政策学科教授。●専門分野:観光経営、観光イノベーション。

株式会社オータパブリケイションズ
専務取締役
経営調査室長
村上 実
Minoru Murakami

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