ヴァルドッビアデネの老舗、ビゾル(BISOL)の地下セラー。ビゾルではカルティッツェ ドサージュゼロや区画を厳選したブリュットなどによる瓶内二次発酵のスプマンテも製造。フレッシュさが特徴のグレーラに長期熟成をかけて、この地で育まれるブドウの可能性を追求している
豊富な商品ラインと巧みなブランディングでプロセッコの市場を開拓し続けるアストリア(ASTORIA)。一度の発酵で発泡性ワインを造り上げるシングルファー面テーションも採用している
ボトルの形状やパッケージデザインでもプロセッコ市場をけん引するフォス マライ(FOSS MARAI)のウンベルト・ビアジオット氏。発酵における酵母を重んじ、野生酵母の研究にも余念がない。培養した酵母は一次発酵と二次発酵、ヴィンテージなどあらゆる局面で使い分ける
ビアンカ ヴィーニャ(Bianca Vigna)はプロセッコに循環型社会への対応という現代の風を吹かせる。栽培にだけでなく太陽光発電、ボトルの軽量化によるエネルギー消費の削減にも取り組み、業界の新たなスタンダードを創り出す。写真は栽培・醸造担当のエンリコ・モスケッタ氏
コネリアーノ醸造学校と
加圧式醸造タンク
プロセッコの泡立ちの礎となる、現地では「メトード マルティノッティ」と呼ばれるタンク内二次発酵(いわゆるシャルマ製法)は、プロセッコの基幹ブドウ品種であるグレーラの特性を生かしたワイン造りとしてコネリアーノ醸造学校で育まれた。
グレーラを85%以上使用し、ヴェルディッソやビアンケッタトレヴィアーナなど伝統的な品種は最大15%まで使用できる。例えばヴェルディッソは、カルティッツェの魅力をより高め、ペレーラはワインの香りとフルーツ感を増すために使用される。またピノビアンコ、ピノグリージオ、ピノネロ、シャルドネも15%まで使用できる。
斜面にブドウが植えられているこの地域では、収穫は否応なしに手摘みになることが多い。プレスしたジュースから15 ~ 20 日間をかけてアルコール発酵を進め、ベースワインが造られる。
二次発酵はアウトクラーヴェと呼ばれる加圧タンクで行なわれる。グレーラ特有のアロマを生かし、フルーティーでフローラルなワイン造りに適した手法であり、30 日間の発酵が必要だがより複雑さを求めるために60 ~ 90 日を費やすこともある。ボトリングから約1 カ月で市場に出る準備が整う。
DOCG のさらなる細分化と
浮き出たテロワールの個性
プロセッコ スペリオーレDOCG は「ブリュット」「エクストラドライ」「ドライ」の三つのスタイルで造られているが、特筆すべきはこの産地の特別呼称「リーヴェ」(Rive)と最上級として位置付けられる「スペリオーレ ディ カルティッツェ」(Superiore di Cartizze)だ。
方言で“ 険しい地形” を意味する「リーヴェ」は43 カ所あり、DOCG エリア全域に点在する。ラベルに「Rive」と表記するためには、生産区域の限定はもちろん、1ha 当たりのブドウの収穫量は他の13.5トンから13トンに制限される。常にヴィンテージ表記をする必要があるのもリーヴェの特徴だ。プロセッコ スペリーレDOCG の中でもテロワールの本質を感じさせる力強さがある。そして名実ともにプロセッコの最高位と評されるのが「スペリオーレ ディ カルティッツェ」だ。DOCG エリア西部、ヴァルドッビアデネの最も険しい丘陵地帯にあり、100 以上の生産者がわずか107 ㏊を細分化して所有している。独特の地形と1000年を超える農業の伝統による産物だ。二次発酵とボトリングはトレヴィーゾでできるが、ベースワインの醸造はヴァルドッビアデネのコミューン内でのみ行われなければならない。
年間生産本数100 万本のカルティッツェは“イタリアワインの宝石”と評されるまさに「スーパープロセッコ」なのだ。