瀬戸内リトリート 青凪 総支配人
吉成太一氏
〈プロフィール〉福島県出身。人材会社営業などを経て、二期倶楽部へ。コンシェルジェやイベントプロデュースなどを経験。2015 年に㈱温故知新へ入社、2017 年8 月から瀬戸内リトリート青凪 総支配人へ就任し現在にいたる。
光を見つける。磨いて、届ける。
「瀬戸内リトリート 青凪 総支配人 吉成太一氏」
❐ まずは総支配人就任おめでとうございます。30 代と若いですが、今のお気持ちをお話しください。
2015 年12 月に運営を開始しました。安藤忠雄建築ということもありお客さまの当ホテルへの期待値は高いものがありますね。その名に恥じないようにスタッフ一人一人の知恵を出し合い運営を行なっています。重責ですが非常にやりがいもあります。愛媛県松山市に位置しており、また、瀬戸内海国立公園を見下ろすことができる眺望も絶景です。非常に素晴らしい環境の中で働くことができ、またお客さまをお迎えすることができる環境ですので非常に光栄です。運営開始からスタッフとして働いていましたが、2017 年8 月から総支配人としての職務に当たっています。
❐ チェックインして館内を見学させていただきましたが、至るところにオンリーワン・「瀬戸内」エリアの特色が出ていますね。
ありがとうございます。ホテルコンセプトは「ミニマルラグジュアリー」ですが、瀬戸内海に面しているということもあり、客室のアメニティ・SPA・ウエルカムドリンクなど細部にわたり、ラグジュアリー+「瀬戸内」色を出すように心掛けています。チェックイン時に提供しているウエルカムドリンクとして、瀬戸内産のミカンジュースを召し上がられたと思いますが、これは「早生みかん」の最高級品質を絞ったもので市場に出回っていないものを農家と交渉して提供しています。
❐ 客室アメニティや、セレクトショップ(売店)で販売しているものはスタッフ独自の選定ですか?
そうですね。愛媛と言えば「道後温泉」が有名です。温泉に入ってから当ホテルを訪れるお客さまもいらっしゃいますので、「かすり湯かご」などの愛媛県に代々受け継がれる伊予の伝統工芸品も置いています。これはスタッフからの意見を尊重しながら東京のブランディング担当者がトータルコーディネートを行ない選定しています。
❐ 従業員の接遇スキルが非常に高い印象がありますが、どのようなことを意識してオペレーションを行なっていますか?
現在当ホテルの従業員数は総勢15名です。バックグラウンドは高級ホテル・リゾート出身が多くそういった意味では個々のスキルは高いものがありますね。当ホテルは一人一人がカバーする範囲が広く、綿密なシフトシミュレーションを組み、時間単位でスタッフの配置をチェンジしています。例えば、チェックインは15:00 からとしていますが、スパの施術スタッフ・厨房レストランからの人員を一定の時間内でフロントに集約させサービスに当たっています。サッカーで例えるならば、“オールコートディフェンス”ですね。
また、スパスタッフも含め全サービススタッフに話していることですが、お客さまが宿を離れる際の「チェックアウト対応」には最善の注意を払っています。例えば、ご精算された後の「エクストラ・ワンマイルサービス」。すなわち、もう一つ心のこもったサービスをお客さまに提供するということです。決してモノではなく、お客さまが見えなくなるまでお見送りをするなどの対応などが挙げられます。状況に応じてスタッフが自発的に行なってなっていますね。
❐ チームメンバーを育成することで心掛けていることは何ですか?
二期倶楽部でもそうでしたが、スタッフが地方で暮らす中でどうしても新鮮さがなくなって来る瞬間があります。そのような環境でスタッフのモチベーションを維持・向上させていくには、一人一人とたくさんのコミュニケーションを取りながら、「自分たちで心の中から発信するノリ」を大事にしています。変えるもの・変えないもの・やりたいことなど、スタッフ独自によるホテルの魅力づくりを行なっています。
例を挙げると、地元松山のお客さまに気軽に来ていただくために、ランチサービスやサンセットカフェなどの案を現在検討しています。これは、地域との連携・近隣施設との提携など「地元から応援される宿」も目指しているからです。なぜなら、地域に愛されない宿は、長期的視点から生き残れないと感じているからです。
瀬戸内のミシュラン
瀬戸内のショーケース
❐ 料理の完成度が非常に高いと感じていますが、いかがですか?
ありがとうございます。今最も力を入れているサービスは料理も含めたサービスです。夕食コンセプトは「瀬戸内旅懐石」。瀬戸内らしい情景をテーマに、瀬戸内海の海の幸、四国の野菜などストーリー仕立てでお客さまに提供し、コースが終わるころには瀬戸内をぐるっと旅してきた気分になる、というものです。メニューは料理長をはじめとして、サービススタッフ、本社メニュー開発チームを交えてお客さまの意見を反映させて絶えず創意工夫しています。「地のもの」・「旬のもの」を多く取り入れ、料理のプレゼン・器・接客サービスなどの改善をチーム全体でミーティングを行ない進めています。
顧客満足度は「4.7」以上を目指す
― For Your Customer
❐ 最後の質問です。リッチ層が多くご宿泊されているようですが、お客さまの満足度はいかがですか?
現状は、おかげさまでお客さまから高評価をいただいておりますが、決して満足していません。ご宿泊のお客さまで新規のお客様は海外のお客さまも含めOTA から主に集客しています。また記念日にご利用されるお客さまが多い傾向があります。基本的に「NO」と言わないサービスを心掛けています。また、「For YourCustomer」お客様のためにベストを尽くし良いアクションをしたメンバーをお互い褒め合う文化を目指しています。CS(顧客満足度)を高めるにはES(従業員満足度)の向上が前提にあります。
お客さまアンケートは客室にも置いておりますが、目標は4.7 を目指しています。さらなる満足度を高める上でのファクターは「料理」と「サービス」だと思います。時代の流れに合わせ、お客さまの視点に立ち、良いものはどんどん取り入れていきたいですね。
VOICE from Hayashida
ハードを支えるソフト
この宿は、ハード面に眼がいきがちであるが、食事・サービスを含めたソフト面も侮れない。二期倶楽部出身の総支配人のリーダーシップのもと、若い従業員がいきいきと働いている姿が印象的である。わずか7 室で3500㎡という規格外の延べ床面積の中で、従業員一人一人がカバーする領域は広く、大変であると思うが、それを微塵も感じさせない。スパスタッフも含め時間単位で従業員の配置・業務を変える、“ タイムリーフォーメーション” にこの宿の秘密がある。顧客との絶妙な「間」の取り方、夕食時の食事にあった地酒・ワインをお勧めする「ペアリング」というサービス。まさにプロフェッショナルのなせる業であり一人一人がバトラーである。