㈱龍名館 取締役
濱田裕章氏
世界的に旅行者が増加する時代
今回は、龍名館がホテル立ち上げの際に大切にしている部分について触れさせていただきます。弊社運営の2 棟のホテルは色々議論を重ね、考え抜いた末に出来上がったホテルです。一つひとつ丁寧にこだわりのあるホテルを作るべきだと常に考えており、それにはいくつかの理由があります。
ホテル・旅館市場を見ると、対照的な状態になっています。約20 年前、旅館の市場規模はホテル市場の約3 倍ありましたが、その後大きく減少し、ホテル市場と同規模になっています。ホテル市場はその間横ばい、東日本大震災で一時減少するも、昨今の観光業の盛り上がりを受け、2014 年から大きく増加しています。旅館については後継者問題や地域間での課題など様々な要因が関わっていると言われますが、宿泊市場を含む観光産業は、発展途上国の成長やアジア諸国の所得増加などを背景に、世界的に見ても成長産業であり、その影響は日本にも確かにつながっています。2016 年には訪日外国人旅行者数が2000 万人を突破しました。
しかし、同時に他産業からの新規参入も増加しており、競争が激しくなってきています。ホテルの施設数・総客室数は毎年増加傾向にあり、昨今話題の民泊なども、日本では新規参入の代表例です。このような競争が激しい市場の中で、ただ部屋にベッドや布団を置いただけでは魅力に欠けます。ましてや小さいホテルや旅館であればパブリックなどの施設・設備的な付加価値を作りづらいため、盛り上がっている市場とは言え、常識を覆したサービスを創出してくる多数の新規参入がある激しい市場の中で生き残るのは難しいと考えます。