東出江津子
〈プロフィール〉ザ・キャピトルホテル東急 エグゼクティブコンシェルジュ。レ・クレドール ジャパン 前会長。明治大学卒業後、センチュリーハイアットリージェンシーに入社。宿泊部業務全般とアシスタントマネージャー業務を経験後、本格的にコンシェルジュとしてスタート。その後、メリディアングランパシフィック、フォーシーズンズホテル丸の内東京、ホテルニューグランドでシェフ(チーフ)コンシェルジュ(管理職)の経験を重ね、2015 年7 月よりザ・キャピトルホテル東急に移り、現職に。1990 年、レ・クレドール インターナショナルより指導を受け、レ・クレドール ジャパンの創設のための勉強会を東京で主催。1992年よりレ・クレドール会員。
経験を経たメッセージが共感の音叉=ゲストの感動を呼ぶ
最近コンシェルジュに内覧会や視察などのご案内をいただくことが増えた。毎月何十件という招待に苦慮している外国のコンシェルジュに比べるとその数はまだ少ないが、かつては同じホテルでも、営業や広報、予約などの部署に案内が届いていた。団体客が“個人客”に、「予約」が予約係やセールスを通さない“インターネット予約”へと変遷を遂げ、個人客やインバウンド客誘致の期待も増し、その宛先にコンシェルジュが追加され始めた。
インターネットが普及し始めたころ、コンシェルジュは必要なくなるのではとささやかれていた。しかし、個人がどこにいてもインターネットに接続できる時代になった今でも、コンシェルジュの業務は一向に減るどころか、より複雑で高度なサービスが求められている。特に外国人ゲストはトリップアドバイザーや各種ブログなどから集めた情報を持ち込むが、最終的には言語の問題を含め、パーソナルで特別な希望やコーディネイトを確実にするため、コンシェルジュに相談に来る。
それらに対応するため、コンシェルジュ自身があらゆる分野の情報に興味を持ち、引き出しを増やすことはもちろん、旅行者のバックグランドの理解が不可欠だ。特に外国人ゲストには、ただ手配をするだけでなく、各国の宗教や慣習など諸事情を認識し、日本のルールや考え方、文化や生活を伝え、外国人と日本を上手に結びつける。それが日本のコンシェルジュの大切な役割ではないだろうか。
また、誰に何をどのように伝えたら忘れられない思い出につながるかは、コンシェルジュが視察や経験を通し、感じ得た“自信”を含む感動的で情緒的なメッセージにより、体験したゲストの“共感の音叉”が満足度を上げ、“感動”をも与えるサービスとなる。それがゲストが並んで待ってまでも求めている“真の答え”ではないかと日々感じている。