公益社団法人 国際観光施設協会 常務理事・ホテレス実行委員会委員長 株式会社スターツ総合研究所 設計部 シニアアーキテクト 浅野 一行
第44 回国際ホテル・レストラン・ショー(以下、ホテレスショー)は、旺盛なインバウンド需要による活況を背景に、好評のうちに閉幕しました。当協会は、今年も主催者団体の一つとして、企画を行なうとともに、約170㎡のブースを出展し、公益社団法人としての活動を、展示とセミナーを通じて紹介させていただきました。
今回の「観光施設メディアラボ」では、その具体的な内容について、ご報告させていただきます。当協会は、「国際観光振興に技術で貢献する」を理念に、会員である設計事務所、コンサル、ゼネコン、サブコン、メーカーが各々の得意分野で協働し、想像力とハードの力で観光の未来を切り開くべく、調査・研究を行なっています。ホテレスショーへの出展は、その1 年間の活動の集大成であります。
①「 お茶飲みはなし」での歓談
日本のこころ
出展の総合テーマは継続的に「日本のこころ」としています。これにそって「旅するこころ」「木づかいのこころ」「匠のこころ」「エコ・小のこころ」の4 チームが結成されました。
「旅するこころ」では、“ 滞在して楽しい観光地づくり” をめざし、①映像「旅するこころ2016」を上映。②当協会主催の公開セミナー「たびむすび」を紹介。③地域連携により、世界に誇る日本の山岳リゾートを目指す「アルプス山岳郷」への支援。④観光・まちづくり系の大学との連携を紹介しました。「木づかいのこころ」では、継続して取り組んでいる“ 木材等自然材料の利用”において、ユニークかつ汎用性があり現実的な提案として、災害時に備えつつ木材の活用を図る「美蓄木道」を提案しました。昨年の全体模型に今年は原寸の構造システム模型を加え、より現実的な提案となりました。企業展示パネルでも、参加各社の「木づかい」への積極的な取り組みが報告され、またセミナーも展示との連動で分かりやすいと好評でした。
② センタープラザ 副会長涌井によるオープニングセレモニー・基調講演
③ ホスピタリティデザインセミナー
「匠のこころ」では、昨今その実力が世界に評価され始めた、世界が認める“JAPAN DESIGN” に焦点をあて、日本の歴史と伝統・文化が築き上げた、きめ細やかで美しいデザインの質を浮彫りにしました。出展企業による自社製品の展示パネルは、まさに日本のこころが宿る素晴らしい出来栄えとお褒めの言葉をいただきました。
「エコ・小のこころ」では、①会員企業の連携による研究開発として、エアインシャワーによる節水効果の発表。②地域「エコ・小」推進活動の報告。③ 2030年観光産業CO2 26%削減政策提言の報告を行ないました。また、出展企業の展示パネルでは、各社が誇る「エコ・小」技術を紹介しました。
(「エコ・小」とは、自然環境を保全し、小さなエネルギーで動く持続可能なシステムのこと)
そして、四つの展示に囲われた中央の「センタープラザ」では、4 日間を通じ35 本の各種セミナーを開催しました。大変多くの方々が、足を止めてセミナーに耳を傾けて下さいました。
また、新たな試みとして、センタープラザの一角に「お茶飲みはなし」のコーナーを設けました。欅の一枚板のテーブルを囲んでお茶をすすりながら、「滞在型の旅であなたはどうするか」を食事、寝床、お風呂などについて語り合っていただきました。
④「旅するこころ」展示ブース
⑤「木づかいのこころ」展示ブース
ホスピタリティデザインセミナー
さらに、当協会は「ホスピタリティデザインセミナー」の一部を「ホテル・旅館の開発&デザイン―最新潮流2016―」と銘打って主催しました。アマン東京、翠嵐ラグジュアリーコレクションホテル京都、星のや富士など最近の話題作の事例紹介をはじめ、スモール&ラグジュアリー旅館などのタイムリーな内容に、連日多くの来場者を集め、4 日間盛況のうちに終わりました。
こうした当協会のホテレスショーへの取り組みは、観光の未来を見据え、ビジョンを掲げ、技術的裏付けをもって、国際競争力のある持続可能な観光施設・地域の創造を目指すものです。このような視点をもって、商談展示会に出展することの社会的意義は大きなものと自負しております。
⑥「匠のこころ」展示ブース
⑦「エコ・小のこころ」展示ブース