店舗入り口。オープン初日は150人越えの行列ができ、もっとも入店を待ったお客さまは6時間半待ったという。飲食店激戦区の上野御徒町に新たな“行列のできる人気店”、それも“超”がつく店が誕生した
札幌のレジェンド店がまたひとつ、東京に上陸した。地元での人気が高いことはもちろんだが、出張族のリクエストトップ3に入るといわれている「成吉思汗(ジンギスカン)だるま」が上野御徒町に出店したのだ。
同店は昭和29年、寡婦となった初代が北海道でポピュラーだった羊肉を使い、庶民が気軽にたくさん、そして美味しく食べられるようにと工夫を重ね、ススキノに店を構えたことに端を発する。今回の東京進出に際し、3代目である副社長の金有燮(ゆそぷ)氏は「初代はいろいろと大変なこともあったと思います」と語ったが、想像するにそんな言葉ではすまないほどの思いもされてきたのだと思う。しかし、そんな中においても“すべてのお客さまに安くて美味しい羊肉をお腹いっぱい食べて欲しい”という思いを貫いてきた同店の羊肉、それもマトンを一口食べれば、今日札幌を代表する飲食店になるほどに初代が、そして彼らファミリーが真心を込めて羊肉を提供してきたことを理解してもらえると思う。
とにかくうまいのだ!
同店のマトンは札幌でもラム肉だと勘違いして食すお客さまが少なくないそうだが、実際、もし事前に説明されていなければ、“どれだけいいラムを仕入れているのか?”と聞きたくなるほどに臭みがない。もっといえば、ヒレ肉などは“これが本当に羊ですか?”と問いたくなるほど雑味のない、きれいな肉が提供される。
ちなみに同店のメニューは実にシンプルだ。肉はモモ、バラ、ウデ、肩ロース、ロースなどの部位が味わえる“成吉思汗(ジンギスカン)”に、脂身の多いロースと肩ロースを分厚くカットした“上肉”に希少部位の“ヒレ肉”のみだ。それもこれらすべてが"マトンの!"だ。それ以外に、たまねぎと長ねぎがミックスされた“お野菜”に、同店で長年愛され、毎日札幌で手作りされている“ママの手作りキムチ”。あとは突き出しで出される野菜の漬物にチャンジャと韓国のりのみ。味に自信がなければ勝負できないシンプルなラインナップだ。
今回、東京での出店にあたり金副社長には、“札幌と価格を変えたくない”という思いが強くあったという。しかし、家賃や食材費など現実的にそれらが難しい中、“だるまが東京にくるなら!”と多くの事業者からの協力があり、札幌の価格に輸送費を10円だけのせる形での出店が適った。また、“代を紡ぐことが大切だ”という社是のもと、司法書士として活躍していた4代目である金天憓(チョネ)氏が、司法書士とだるまの二刀流で、現在事業に参画している。
地方の人気店の底力や人気店の事業継承、そして地方から東京への出店など、同店の東京出店にはさまざまに考えさせられ、学ぶことが多かった。予約ができないことから長蛇の列に並ぶことは必須だが、またぜひ訪れてみたい。
「成吉思汗だるま 上野御徒町店」
https://sapporo-jingisukan.info/ueno-okatimati
担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp