店舗内観。オーナーこだわりの空間は和モダンでシックなデザインで統一。もともと、同社が馬肉販売店として展開していた同地には感度の高いお客さまも多く、デートや記念日にも適う形での開業となった
「馬肉酒場馬喰ろう」や「馬酒場ボブリー」など、馬肉に注力した店舗展開をする㈱馬喰ろうが恵比寿に新ブランド、「恵比寿馬くろう」をオープンした。
同店は他店同様に馬肉料理に注力した店舗だが、恵比寿というロケーションや既存のお客さまからのニーズも鑑み、店内を和モダンテイストなデザインにすることで接待や会食、デートなど、落ち着いた雰囲気での利用にも適う空間にした。
馬タン。画像は“名物 塩しゃぶ”で提供されているもの。馬タンは牛タンに比べ細長く、筋肉質で加熱時の収縮が顕著であったり、タン先からタン元までの触感やサシの入り方にムラがあることから、ムラなく提供するために縦にスライスして盤面を広くしている
飲食店経営のみならず、BtoB、BtoCでの馬肉販売も担う同社では、“馬肉が当たり前に食される食文化が日本に根付くこと”を目標にしているという。そこで同社代表取締役の沢井圭造氏に馬肉への思いを伺ったところ、
「もともと兄が馬肉メーカーを営んでおり、そこに入社後に馬肉の加工や仕分け等を学び、全国の精肉店や量販店、飲食店などにむけた配送や営業活動などに携わってきました。その中で熊本・長野・山梨・福島・青森といった馬肉の生産及び消費地といわれる地域でさまざまな馬肉文化に触れ、それぞれの土地に根付いた食べ方や調理法を知るうちに、より多くの人に馬肉料理の魅力を知ってもらいたいという思いが強くなっていきました。そこで商売としてだけではなく、“馬肉の啓蒙”に一石を投じることはできないかと考え、自身でも飲食店を展開するに至りました。
馬肉は現在の日本で唯一、厚生労働省に生食が認可されている食肉であり、高タンパクで低脂質・低カロリーな上に鉄分やグリコーゲン、アミノ酸等が豊富と、他の畜種と比べ格段に栄養価の高い食肉でもあります。また美味しさや旨味が強いわりにクセがなく、部位ごとの味わいや触感にも違いがあることからさまざまな調理に適した食材だともいえます。このように現代の食に求められる“安心安全・美味しい・ヘルシー”の三拍子が揃った馬肉の魅力をより多くのお客さまに知っていただきたく、今回、これまでの店舗とは趣を変えての出店に踏み切りました。
ただ、現在日本の馬肉需要の9割以上が海外からの輸入に頼っている状況で、より多くのお客さまに馬肉の魅力に触れていただくためには為替の動向など悩ましい点もあります。ただ、安価で楽しめる馬肉も沢山有るので、そこは今後も幅広いお客さまに馬肉を楽しんでいただけるよう、努力していきたいと思います」
と返ってきた。
馬はその脂肪酸組成が人間の組成と酷似していることから人との親和性が高く、筋肉の回復や成長サポート、消化吸収の良さから体に優しい食材として、近年注目が高まっている。そういった意味でも、沢井氏の馬肉に対するアプローチは日本の“食”産業にとって非常に有益な活動だといえる。同氏が展開していく今後に期待したい。
「恵比寿馬くろう」
https://bakurou.com/shop/ebisu-bakurou/
担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp