ハッピーなスパイラルのスタート地点は自由にサービスするスタッフの笑顔である
甲斐 立場上、私は会食で色々な飲食店に行く機会が多いのですが、個人的に再度うかがいたいと思わせてくれるのはどんな店だろうと考えてみると、味の善し悪しだけを判断基準にして再訪を決めてはいないな、と思うのです。店主や一緒にいたお客さまの話が面白くて、意気投合したといった体験があったからこそ、またその店に行きたくなります。
つまりマニュアルに縛られたスタッフがサービスを提供するスタイルでは、再訪したいという気持ちを引き出すことができないのではないでしょうか。各スタッフが自分らしさを発揮したサービスを提供することでお客さまは愛着を持ち、それが感動を生み、リピートにつながる気がします。
阿部 それは同感です。スタッフには「自分自身が楽しんで、自由にサービスを提供してください」と伝えています。ホテルマンにとって、パーソナルな顧客を持つことは非常に大切です。パーソナルな顧客を持てば持つほど仕事は忙しくなっていきますが、自分の顧客に喜んでもらえた達成感はホテルマン冥利に尽きると言えます。100人のスタッフが1人から3人と顧客を創れば、ホテル全体で300人のリピーターが生まれることになります。リピート率を上げるためにも、個々のスタッフが自分の顧客づくりに対する意識を強く持ち続けることが絶対的に必要なのです。
その形を創るためにも、サービスのやり方に自由を与えることが必要です。それによって彼らが笑顔になり、ESが向上し、CSの向上に結び付き、リピーターが増えていく。ハッピーなスパイラルのスタート地点は、「スタッフの笑顔」なのです。
甲斐 私は 28年間、マーケティング業界で仕事をしてきましたが、リピートという言葉だけでは表現しきれない関係性が最近見えてきました。これからの時代における企業とお客さまの関係性を考えるとき、「ファン」を創っていくことがポイントになると思い当たったのです。その企業が持つサービスや価値観を好きになり、共感を持って応援してくださるファンづくりが大切になるのではないでしょうか。
阿部 お客さまをファンとして捉える考え方はとても斬新ですね。これからのマーケティングにおける大事な考え方の1つだと思います。ただし、ホテル側から「あなたはカハラ 横浜のファンです」という言い方はこれからもすることはないでしょう。カハラ 横浜を好きでいてくださる人が、必ずしもホテルに足を運んでくださるとは限りません。来館しないファンも数多く存在するからです。
リピーターは何度もホテルを利用して私たちの仕事を作ってくださるので、私たちはビジネスとしてもリピートするお客さまを大事にしなければなりませんが、リピーターをファンという表現に置き換えてしまうと少し違ったポジショニングになってしまいかねないと感じてしまいます。
甲斐 一概にファンという言葉が、どの業態や業界に当てはまらないのかもしれませんね。ただ、顧客の皆さんとの接し方を、自分たちの活動に共鳴してくれているサポーターのように捉えてお付き合いするというのはこれから考えてもいいのかもしれませんよ。最後にひとつだけ。ITの仕事をやってきた私から伝えたいのは、「ITには限界がある」ということです。ベースにある人がやるべき仕事を ITがサポートすることで、より人が力を発揮できる環境を整えていきたいというのが私の考えです。
阿部 それも共鳴できますね。
第三回の“ポリマスの言葉”
「お客さまをファンとして捉える考え方はとても斬新。これからのマーケティングにおける大事な考え方のひとつだと思う」
―阿部 泰年氏―
「企業が持つサービスや価値観を好きになり、共感を持って応援してくださるファンづくりが大切になる」
―甲斐 真樹氏―
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