お客さまの評価を表すリピート率が高くなれば業績は自動的に上がっていく
甲斐 いきなり少し物言いが厳しく聞こえるかもしれませんが、ホテル業界の方々とお会いするなかで私が気づいたのは、ホテルの皆さんはリピートに対する感覚が少々小売業や店舗型飲食業などに比べると違うのではないかということでした。OTA経由でお客さまが来てくださることから、1人1人のお客さまの好みや属性を掘り下げる活動を、滞在前などにあまりされていない印象を受けたのです。
いまはホテルに限らず、コロナ禍によるダメージを大きく受けたところは、そもそもリピーターを育てる意識が低いところが多かったことから、血眼になってリピーターを育てている企業が増えています。そのあたり、阿部総支配人はどのようにお考えですか?
阿部 他業界を見るとそう思われるかもしれませんね。ただ、私がザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜(以下カハラ横浜)の開業前から言い続けているのは「カハラ横浜にとって最も大事な数字はリピート率です」という言葉です。リピート率こそがお客さまの評価の高さを表すと私は考えていて、その数値が高くなればなるほど業績は自動的に上がっていくと感じています。このスタート地点を間違えていきなり利益の追求を最優先に掲げてしまうと、私たちの仕事の一番の醍醐味が置いていかれてしまうのではないかと思います。だからこそお客さまとの接点であるサービスを大切にするためにも、リピート率にこだわりを持つようにスタッフに言い続けることが重要になります。
甲斐 そのように思われるようになったきっかけはなんだったのですか?
阿部 リピート率を一番大事にするという発想に至った理由として、カハラ横浜が完全会員制の横浜ベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート(以下横浜ベイコート)と併設されていることが理由の一つに挙げられます。両ホテルの開業準備室は同じタイミングで立ち上がり、一緒に準備を進めてきました。お互いに協力しながら、共に成長し続けていくハイブリッドホテルというポジショニングです。
私自身、完全会員制ホテルの経験はまったくなかったのですが、開業準備を一緒に進める中で驚くことがたくさんありました。たとえば 100人のお客さまが横浜ベイコートに宿泊する日、スタッフは 100人すべての情報を既に持っているのです。一方で現時点(取材時)のカハラ横浜のリピート率は約 15%ですから、100人のお客さまのうち、15人分しか情報を持っていないわけです。
ホテルにとってお客さま情報は財産です。カハラ 横浜が都内のラグジュアリーホテルと競争していくためにも、情報をどのように入手し、管理し、活用するのかについて高いレベル感で意識しなければなりません。