エントランスからほど近い位置に登場するダイナミックなオープンキッチン。フランス時代を共に過ごしたシェフ・パティシエの宮本景世氏、スーシェフの渡邊亮介氏、シェフソムリエのBertrand Verdier氏も同店開業にあたり来日し、最高のコンディションで東京での新たなスタートをきった
本場フランスで、ミシュランの星を5年連続で獲得してきたスターシェフが帰ってきた。パリの人気店「Restaurant ERH」を率いていた北村啓太氏が、虎ノ門ヒルズステーションタワー49階に「apothéose」を開業するべく帰国したのだ。
当初、北村氏のライフプランに“日本へ拠点を戻す”という意味での帰国はまったくなかったという。しかし、運営会社である「Plan・Do・See」との縁、そして森ビルが開発をすすめる「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」最上階の「TOKYO NODE」内における開業が見せる展望など、さまざまな要素がひとつのイメージとしてまとまったことで、15年ぶりに日本の地で新たな挑戦をする決意をしたという。
北村啓太氏。小田原「ラ・ナプール」、「レ・クレアシヨン・ ド・ナリサワ」と8年間の成澤由浩シェフ師事を経て、渡仏。「ピエール・ガニェール」、「シェ レザンジュ」などの名店を経て、2017年「エール」のシェフに就任。2019年より5年連続でミシュランの一つ星を獲得した
そんな北村氏が帰国後まず取り組んだのは、日本食材と改めて向き合うことだ。農業や漁業をはじめ、日本全国のさまざまな地、そして生産者の元に足を運び、“日本再発見の旅”をしたという。その旅で感じたことは、同じ食材であっても日本とフランスでは“別物”といっても過言ではないものが数多くあり、中でも塩の違いに感じるものが大きかったという。塩はいかなるジャンルにおいても料理の要だ。この発言に筆者は、北村氏がフランスでの15年間、本場“フレンチ”の世界でどれだけストイックに、そしてアグレッシブに料理と向き合ってきたかを感じた。さらには、そこでミシュランの星を獲得したという実力に、東京での彼の活躍に大いに期待する次第だ。
北村氏曰く「apothéose」では、日本風土が生み出す食材と長きに渡り磨かれてきたフレンチの技の融合によって作り得る、心地よい裏切りや好奇心を掻き立てるような体験を届ける“記憶に残る料理”を創造していきたいとのことだ。彼なら必ずやわれわれの記憶に残る体験を提供してくれるだろう。
「apothéose」の今後がとても楽しみだ。
「apothéose」
https://apotheose.jp/
担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp