「東京寿司 ITAMAE SUSHI」赤坂店外観。店内の個室ではより江戸前寿司の味わいを楽しんでいただけるよう、職人がネタに仕事を施すようすを見ることができる動画をモニターで流している
東京を中心に寿司業態を展開している「板前寿司」が、成長を続けるインバウンド市場をターゲットに据え、江戸前寿司と和牛を楽しめるブランド「東京寿司 ITAMAE SUSHI」をメインブランドとして展開していくことを発表した。店名に入れた“東京寿司”は“江戸前寿司”を指し、東京湾を巨大生簀と捉え、東京湾でとれる魚の仕入れにより力を入れていく。今回の取り組みでは都内で運営する7店舗が「板前寿司」から「東京寿司 ITAMAE SUSHI」へと店舗名を変更し、今後もよいロケーションとの出会いがあれば随時拡大していくという。
同社のインバウンドとの付き合いは長い。世間がまだ、インバウンドいう言葉を一般認知する前、さらにいえば観光立国日本という言葉すら一部で叫ばれるにとどまっていた時代から、積極的に外国人のお客さまを受け入れてきた。当時の光景として、都心部でも外国人客を嫌煙する寿司店がまだまだあったという。しかし、“日本の寿司の良さを知ってもらいたい”、“旅のいい思い出として日本での食体験を持って帰ってもらいたい”との思いから、時にはスムーズな対話が難しい中でもお客さまとのコミュニケーションを大切にしてきた。その努力とホスピタリティは、インバウンドが盛り上がったコロナ前のみならず、コロナ後の現在もさまざまな国から多くのお客さまがリピーターとして戻ってきている結果に現れた。ちなみに当初は海外でもメジャーなロール寿司系の注文が多い傾向にあったが、昨今は握りでの注文も増え、お造りを10種、20種と注文するなど、より食材の味わいや奥深さを探求する“トキ消費”を求めるお客さまが増えているという。加えて、寿司文化について勉強してくるお客さまも増えており、それらのニーズに応えるべく、今回の店名変更およびブランディングの強化を推進することにした。
同社ではインバウンド向けのSNS発信など広報戦略にも力を入れている。中でも道行く外国人にゲリラ的に声をかけ、生ウニにチャレンジしてもらうTikTokのコンテンツは人気がある。時には断られることもあるが、それも含めて動画をアップしており、若い世代への訴求にも寄与している
そこでフォーカスしたのが江戸前寿司ならではの伝統技法、そして東京湾の魚のおいしさだ。今回同社では、「東京寿司 ITAMAE SUSHI」ブランドの起ち上げに加え、より上質な空間とサービスを提供する「板前鮨」ブランドも起ち上げた。さらに「江戸湾直送 回転 東京すし街道 by ITAMAE SUSHI アクアシティお台場店」を併せた3ブランドでの展開を発表しており、全ブランドに共通するコンセプトを“東京に来たら板前寿司”として掲げた。加えて、よりお客さまへのサービスに現場が注力できるようにとの理由から、江戸湾の魚に強く、現場の仕事をスムーズにする加工までを担う事業者に仕入れ先を変更した。インバウンドはもちろん、日本人のお客さまからも安定した人気を持つ鮪についてもより魚本来の味わいや香りにこだわり、肉質のよい寿司を楽しんでいただきたいとの思いから、豊洲市場のまぐろ仲卸「石司」から天然まぐろを仕入れることにした。加えて、インバウンドに人気が高いメニューに肉寿司がある。そこで国産黒毛和牛のサーロインとリブロースのみを仕入れ、彩り豊かなメニュー展開にする工夫をした。そして、“東京に来たら板前寿司”を楽しんでいただくために今回のリブランディングで最も力を入れたのが、江戸前の技が光る“ひと手間、ひと仕事”だ。煮穴子や小肌の酢〆といった王道の技から、湯引きに漬け、真昆布〆など、シンプルながら職人の腕が仕上がりを決める仕事を施した寿司をリーズナブルに提供していくというから、同社の思いの強さ、そして自信を感じる。
日々、インバウンド数は増えており、寿司の人気も健在だ。その中で“世界のITAMAE SUSHI”を目指す同社の取り組みがどのような展開を見せていくのか? とても楽しみであり、今後も注目していきたい。
「東京寿司 ITAMAE SUSHI」
https://itamae.co.jp/
担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp