浅草寺雷門前のお香専門店の香りと共にゲストを出迎える「OMO3浅草」のロビー。伝統の香りが作り出す“静の雰囲気”の中に、OMOブランドの象徴である“ご近所マップ”やオリジナル商品、アメニティが陳列された棚、スーツケースロッカーが設置されており、伝統とモダン、そして合理性を共存させたデザインになっている
今夏、星野リゾートの“テンションあがる’街ナカ’ホテル”OMOブランドから新たな施設、「OMO3浅草 by 星野リゾート」が誕生した。
同施設は東京メトロ銀座線、都営浅草線、東武スカイツリーラインのいずれの路線の浅草駅からもほど近く、浅草寺と東京スカイツリーⓇを間近に眺めながら滞在できる、“浅草の伝統とコンテンポラリー”を共に体感できるロケーションに位置している。中でも、もっともその体感を経験できるのがルーフトップだ。同フロアからは浅草寺から六区に向かう浅草の街を一望することができることに加え、東京スカイツリーⓇを正面に見ることもできる。眼下に見る隅田川も思いのほか近く、今後、同施設が隅田川花火大会のプラチナ施設になることは言わずもがなだ。ちなみに、ライトアップされた夜の浅草も素晴らしいが、日中青空の元で見渡す光景やサンセット、日の出といったタイミングなど、時の移り変わりと共に楽しむ浅草の情景も素晴らしく、ルーフトップ空間は同施設に滞在する魅力のひとつだ。
滞在魅力といえば、他のOMOブランドでは通常ロビーフロアに設置されているパブリックスペースの“OMOベース”が、同施設では13階に位置しているのもいい。浅草寺サイド、隅田川サイドを含む三方面に大判のガラスが配されており、非常に開放的だ。一部、外に出ることのできるテラスも併設されている。加えて、24時間利用可能な“OMO Food & Drink Station”で提供されている浅草グルメのセレクトも秀逸だ。老舗ベーカリー「テラサワ」のパン各種に加え、「龍昇亭 西むら」の羽衣にどら焼き、「浅草パン工房 クラージュ」の浅草あんぱん、「福寿家」の伊奈利寿司に伊奈利ロールなど、浅草の“おいしい”がこれでもかと集結している。朝食タイムには伊奈利寿司などに加え、「雑穀おにぎり専門店maimai」のおにぎり3種が握りたてで提供される心遣いも嬉しい。さらに、酒類のセレクトにも浅草“らしさ”が感じられ、浅草の代名詞でもある“電気ブラン”やレトロを楽しめる“明治復刻地ビール”、浅草橋に醸造所があるベクターブルーイングの「ベクターペールエール」「トムキャット Hazy IPA」といったクラフトビールが用意されている。これらはすべてセルフレジでのキャッシュレス会計となっており、どのような時間帯でも気楽に利用できる。
OMOブランドでは、「OMO3浅草」開業に伴い、東京、大阪、名古屋で上演される音楽劇「浅草キッド」に特別協賛している。作中で描かれる、北野武が若き頃を過ごした浅草の街の様子には現存するものも多く、新感覚の“街ナカホテル”を提案するブランドとして共感する点が多かったことからの取り組みだという。またエンタメ作品にこのような形で携わるのは同ブランド初の試みだ
次に、筆者が以前より同施設開業において強く興味を引かれていたのがアクティビティコンテンツだ。本誌でも過去いくつかの施設を紹介していているが、OMOブランドといえばそれぞれの都市を新たな切り口で魅力訴求するコンテンツ力に定評がある。そういった意味で、観光地としての立ち位置が確立している浅草という街を、どのような切り口で魅せていくのか? については期待と共に、とても興味があった。なぜなら既に情報及び発信量も多く、新たな魅力開発の壁は決して低くないと感じていたからだ。
結果、「OMO3浅草」は浅草の王道を攻め、ここでも“浅草らしさ”にこだわることで、この街に新たな魅力を感じられるコンテンツを用意していた。その代わりといっては何だが、コンテンツ創生にはある意味、慎重に取り組んでいる姿勢が感じられ、現時点ではアクティビティの数は決して多くない。
現状、提供されているのは浅草寺エリアにフォーカスしたご近所ガイド OMOレンジャーによる街のガイドツアー“粋だねぇ、明けの浅草さんぽ”、“OMOベース”で毎夕刻開催される浅草の文化史紹介“江戸屋台ミーティング”、そして毎週金・土曜日に21時(※11月以降のスケジュールに関してはHP参照のこと)から開催される“浅草落語ナイト”の3つだ(※今後、コンテンツが増える予定あり)。これらは、いずれも無料で参加することができる。OMOブランドは“街ナカ”ホテルではあるが、その利便性やワークルームが完備されていることから出張やワーケーションで利用するお客さまも少なくない。そういった意味で、フードや空間から楽しめる“浅草”やアクティビティなど、ビジネスでの滞在にもおいても文化的な彩り豊かな体験ができる仕様になっている点は令和時代のライフスタイルに適っている施設形態であるとも感じる。特に、“粋だねぇ、明けの浅草さんぽ”は、“頑張って早起き”してでも参加するに値するアクティビティだ。現状のツアー範囲は浅草寺、浅草神社、仲見世に限られているのだが、幾度となく現地を訪れていても未知である歴史や魅力に触れることができる奥深いコンテンツ内容になっており、夏季であれば、自由研究の強力な助けともなるツアーだといえる。
都心部ではさまざまな市場を想定した宿泊施設が多く存在する。加えて、開業予定も含め、宿泊施設数も増加し続けている。しかし、“都市観光”の魅力を訴求している施設はまだまだ少なく、さらに魅力的なコンテンツを提案し得ている事業者はさらに少ない。その中で星野リゾートが展開するOMOブランドのアプローチは非常に面白く、さらに日本の都市観光が歩むべき道を見せているといっても過言ではないだろう。同施設が東京観光の重要拠点である浅草で今後どのような展開を見せrていくのか? に注目しつつ、OMOブランドが取り組む都市観光の今後についても引き続き注目していきたい。
「OMO3浅草 by 星野リゾート」
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo3asakusa/
担当:毛利愼 ✉mohri@ohtapub.co.jp