2023年3月に本店をリニューアル。以前のクラシカルなイメージから、ラグジュアリーかつモダンでシンプルな空間へと変身した店内。壁に山水画を描き、飾り棚にはさまざまな焼物を飾った。眼福ともいえる室礼も同店を訪れるご馳走だ
日本における中国雲南料理のパイオニア、「御膳房」を手掛ける東湖㈱が今春の「御膳房 六本木店」のリニューアルオープンを機に、季節ごとにメニューが入れ替わる“華魂和装”コースの提供を始めた。本コースの名前にある“華魂”には中国料理の伝統と技術、そして心を、“和装”にはそれらの料理を日本の器に盛り、和風にしつらえた空間で食してもらうことでお客さまに日中食文化の融合を提案すると共に、架け橋となりたいという同社の強い思いが込められているという。これら料理には、国産の有機農産物に加え、日本及び中国から求めた高級食材が用いられており、同社は美食のみならず、食の安心・安全に対する意識も高い。ちなみに同店の起ち上げは、社長の徐氏が「大地を守る会」の活動に協力したことがきっかけだ。同会に雲南の在来農法を紹介し、現地のひとびととの交流に一役買う中で、大地の会が領布する食材を一流の中華料理人が料理し食せる店を作り、より多くの人に味わってもらう機会を作ってはどうか? と同会会長の藤田和芳氏に提案したことで開業に至ったそうだ。この逸話からも、同社の日中両国の食文化に対する強い思いを垣間見ることができ、今後は日本にも多種多様なキノコが自生することから、これまで培った経験や技術を共有し、付加価値を高めた商品作りなど、産地の魅力創生にも積極的に参画していきたいという。
ところで、雲南省は長年、中国国内からも直接の交通手段がなかったことから、「雲南の十八の怪(ふしぎ)」という言葉があるほど独特の文化や生活様式が育った場所だという。その中には近年話題の昆虫食や、花の蕾や花冠部分を食す花食もあるそうだ。日本も菜の花や菊花など花食文化はあるが、同地では種類も多く、煮炊きに強い、しっかりとした繊維質のものも多いという。加えて、漢方の生薬が数多く生産される地としても有名であり、同店の料理にも“医食同源”の考え方が要所要所に反映されている。薬膳コースには、生薬でもある“田七人参花”が使われた花食もオンメニューしており、今後新たな花食料理が登場することにも期待したい。
「御膳房」といえば、なんといっても色どり豊かに提供されるキノコだ。雲南省に自生するものも含め、厨房には常時20種類以上のキノコが用意されている(画像左)。同社社長の徐耀華氏が2023年3月に上梓した「華魂和装(IBCパブリッシング刊)」。“中国食文化”を知る上での教養の書ともいえる読み応えある一冊だ
同店は、まだ“ガチ中華”という言葉がなかった時分から、当時まだ日本では珍しかった雲南省の食文化に触れることのできる店として人気がある。中でも同地から輸入されるキノコがふんだんに使われ、雲南省では女性にとっては“食べるエステ”、男性にとっては“食べる滋養強壮”ともいわれるキノコ鍋は、同店を代表する料理として長年多くのファンから愛されている。もちろん、今回提供が始まった“華魂和装”コースにもキノコ鍋は含まれており、季節の変わり目など四季折々に変わる滋味にぜひ触れてもらいたい。
御膳房
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担当:毛利愼 mohri@ohtapub.co.jp