店舗内観。表参道の路地裏に建つ築70年を超える一戸建ての古民家をリノベーションした。
昨年、経団連は企業の役員に占める女性の割合を「2030年までに30%以上」とするという目標を発表した。2020年時点で上場企業における女性役員の比率はわずか6%と発表されており、女性の社会における真の活躍には、まだまだガラスの天井があるのが現状だ。これは一般企業に限ったことではなく、ガストロノミー業界においても同様のことがいえよう。「ミシュランガイド」においても、まだまだ女性シェフが星を獲得する比率は世界的な傾向として低いと言われ、「The World’s 50 Best Restaurants」においては〝注目の女性シェフ“という投票項目があるくらいだ。
そんな厳しい世界ではあるが、昨今は〝ガラスの天井“を破る勢いの女性シェフが世界では何人も誕生している。そして日本にもそんな活躍の予感をさせる女性料理人がシェフを務める店が誕生した。表参道の古民家をリノベーションし、フレンチをベースに日本、そして韓国の食文化を独自の感性でフュージョンさせた料理を、日本酒とのペアリングと共に提供する「RESTAURANT HYENE」の木本陽子氏だ。
日本人の父と韓国人の母のもと、東京に生まれる。「ジョエル・ロブション」の直営店、六本木「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」に5年間勤務。その後、韓国へ料理留学し、ソウルの韓国宮廷料理の名店「ハンミリ」で視野を広げたという。日本に帰国後、生産者の課題や環境問題などにふれ、日本の食文化をリスペクトしながらヨーロッパやアジアを見つめた独自の世界観によるフレンチの提供を決意したという
メニューを考える際、「極力食材に手を加えないように、生産者の作品(野菜や肉など)を綺麗な額縁にはめて提供するようなイメージで作っています」と語る通り、木本氏の料理は滋味深く、食した際の味わいにサプライズも多いが、非常にシンプルだ。食材のもつおいしさを最大限活かしつつ、自らが持つ日本と韓国というふたつのアイデンティティを、料理にエッセンスとして加味するクリエイティブセンスに長けているのだ。あくまでも筆者の感触だが、おそらく、彼女が星付きシェフとなるのにそう時間はかからないだろう。
因みに同店を運営するH VIEW㈱は、今回初めてファインダイニング業態を手掛けた。今後は同店を拠点に、オーベルジュや、ケータリング、ECなどの方向性で〝HYENE“ブランドを深掘りする事による新しいキャッシュポイントを作ることに注力します。さらにタレント性のある人材と出会いが有れば、新しい業態を展開する可能性もあるという。同社代表取締役社長の中田氏に、自身の新たな挑戦に際し、木本氏にオファーした理由を聞いたところ、「フィーリング、タイミング、ハプニング!!です。〝外食産業に従事している人を輝かせ、産業自体の社会的地位を上げたい“という思いがある中で彼女との出会いがあり、そのタレント性に惹かれた部分が決め手です!」との回答が返ってきた。
今後、中田氏と木本氏のタッグが日本のガストロノミー業界にどんな新風を吹かせていくのか、とても楽しみだ。
RESTAURANT HYENE
https://hyene.hviewgroup.com/
担当:毛利愼 mohri@ohtapub.co.jp