今回も新型コロナウイルスの中で新しい動きがみられる都市を取り上げたい。前回取り上げた淡路市と同じ兵庫県内に位置する丹波篠山市は、近年、新しい観光スタイルで注目されている都市である。新型コロナウイルス感染拡大が長期化する中で、改めて地方観光地ではワーケーションへの期待が高まっているが、その取り組みも踏まえてみていきたい。

1. マーケットポテンシャル
丹波篠山市は兵庫県中東部に位置し、周辺は山間部に囲まれている。また、市東部は京都府、市南部は大阪府の県境に面している。福井県敦賀市まで伸びる舞鶴若狭自動車道や京都府福知山市まで伸びるJR 福知山線などが走っているため大阪や神戸などの関西経済圏へのアクセスが良好である。

　丹波篠山市の自市内就業率は68.6％となっており、就業人口は隣接する三田市、丹波市などに流出している。都市勢圏を見ると丹波篠山市には5％以上の流入は見られない。また、商業拠点性指数（※1）を見ると丹波篠山市は1.07で、ほぼ自市内で消費が完結している状態である。丹波篠山市の大型店を見ると、「さとうバザールタウン篠山NEWS館・STOCK 館（店舗面積1 万3300㎡）」と「ホームセンターコーナン篠山店（1 万506㎡）」といった施設があるものの、大型ショッピングセンターや百貨店などの都市型商業機能は見られない。

　丹波篠山市の人口は4 万1031 人（2019 年12 月末人口）で、県内の人口シェア0.8％となっている。その他の隣接主要都市を見ると、三田市が11 万1702 人で隣接都市の中では最も大きい人口規模である。概ね50㎞圏内に神戸市や大阪市、京都市といった100 万人超クラスの関西大都市が位置しており、特に神戸市と大阪市の影響下にあると考えられる（図表1）。

増加率（19 年／ 14 年）を見ると丹波篠山市は▲ 5.2％の減少となっている。
その他の隣接主要都市も全て減少傾向にあり、▲ 5％程度の減少幅の都市が多く見られる。その中で加東市が▲ 1.6％、三田市が▲ 1.9％で比較的減少幅が小さ
い。
　丹波篠山市の年齢構造を見ると、若年人口比率は16.2％、適齢期人口比率は18.2％となり、全国レベル（若年人口比率17.4％、適齢期人口比率22.3％）と比較して若年人口比率、適齢期人口比率ともに下回っていることが分かる。その他の隣接主要都市を見ると、若年人口比率は全国レベルの都市が多く、加東市と三田市は適齢期人口比率も全国レベルである。高齢者比率（65 歳以上人口比率）を見ると丹波篠山市は32.6％で全国レベル（26.6％）を大きく上回る結果となった。その他の隣接主要都市でも三田市、加東市以外の都市は全国レベルを超えて高齢化が進展していると言える（図表2）。

　将来推計人口を見ると丹波篠山市はすでに人口減少フェーズに入っており、2040 年頃には2010 年ベースから約30％程度減少すると推計されている。その他の隣接主要都市も概ね同様の傾向にあり、将来的には2010 年ベースの10 ～30％程度の減少になると思われる。その他の隣接主要都市の中で比較的人口ポテンシャルの高い三田市と加東市は減少幅が緩やかである。丹波篠山市は将来的に加東市、西脇市の2 市と人口規模で入れ替わる可能性がある（図表3、4）。

　丹波篠山市の婚姻件数（2017年）を見ると、141 件で、シェア0.6％と小さく、人口シェアよりも低くなっていることから、ブライダルマーケットが流出していると考えられる。婚姻率を見ると丹波篠山市は3.35 件で、全国レベル（4.83 件）、兵庫県平均（4.63 件）を大きく下回っている。その他の都市を見ると、加東市が5.20件で唯一全国レベルを上回っている以外は全国レベル以下となっている（図表5）。

※１ 商業拠点性指数 商業地のレベルの高さを意味し、周辺から消費が流入している拠点性の高い商業地かどうかを判断する基準。指数が1 より大きいほど消費が流入して拠点性が高く、1 より小さいほど消費が流出している。

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