宿泊観光業こそマイノリティへのサービスを充実すべし!
コロナショックが癒えきれぬ今ではあるが、先見の明に富んだホテルは、粛々と新たな試みに着手して いる。その一つが、ビーガンやアレルギーに代表されるような「食のマイノリティ」へのサービス拡充 である。中でも在日 20 万人、オリンピック時にはその数以上の訪日客が見込まれる、イスラム教徒(ムスリム)の人たちへの宗教的食事制限『ハラール』にのっとったサービス提供は、供給可となれば競 合なしのブルーオーシャン市場に入れると話題だ。そのハラールに着目したベンチャーが大阪にあった。 その名も『株式会社 宴会部長』。社名の由来はインパクト重視かと思いきや、そこには熱い想いがあっ た。そのビジョンを創設者の一人である小野田氏に伺った。
㈱宴会部長/㈱GIFT
小野田 栄一 氏
【お問い合わせ先】
㈱ 宴会部長 大阪府大阪市東淀川区東中島 1-20-12-504
info@enkaibuchou.com
※ホームページ www.enkaibuchou.com もご覧ください
希少食材の良さを伝播するため、かって出た“食の盛り上げ役”
▶小野田さん、まずは㈱宴会部長を設立された経緯を教えてください。ーー
もともとは、2008 年にデパートを中心に催事施行事業を営む【㈱ GIFT】を設立したのが始まりです。GIFT では、 地方食材を使った特産メニューの実売が主幹事業でした。6 ~ 7 年ほど日本全国を回り、ありがたいことにたくさんの生産者の方とつながることができたのですが、その中でも太いパイプを作らせていただいたのが、肉の希少部位や、 収穫地が限定される生鮮品を扱う希少食材の生産者さんでした。
そこから事業モデルを飲食店卸業へシフトチェンジして、希少食材でのメニュー構築コンサルティングなどもお手伝いしながら活動拠点を広げていったんです。 その中で、 私自身も希少食材の美味しさや、生産者の皆さんの想いに感銘を受け、もっとたくさんの人にその素晴らしさを知っていただきたく、広報兼営業としてアピール&セールスできる会社を作りたいと思い、別会社の㈱宴会部長を起業しました。
名前は、良さを知っていただくには注目を集めなければということで、“ 食の盛り上げ役 ”という気持ちを込めて宴会部長としました。
▶その宴会部長が、ハラールに目をつけられたのは、なぜだったんでしょう?
実はハラールより先に、希少食材を使って、ベジタリアンやビーガンの方に向けてのお弁当を出そうと思っていたんです。だけど、なかなか競争相手が多かった。数年前から試行錯誤している中で、 在日ムスリムの方たちがハラール食材を日本国内で手に入れ難いという話を聞いて。実際に調べると、確かに苦労をされている。ハラールの定義(※ハラールとは、 ムスリムで “ 宗教の教えで、おこなって良いことや食べてもよい食材や料理 ” のこと)は宗派や人によっても違うし、日本では認知も低い。知れば知るほど、ハラール食材こそ多様性の時代の希少食材であると考えるようになったんです。
難しいと思われがちなハラール食材。それは認識のズレ!?
ハラール食材は、考えられているよりずっと供給しやすいんです。アルコールは調理や清掃に使わない、牛・鶏・ 羊はイスラムにのっとった方法で精肉する。魚介類や野菜、乳製品等も同じく食せます(※一部は宗派によって違う)。 それらをお伝えし賛同いただき、少しずつ生産者の方も増えています。ハラール認証を受けている生産者さんも増えました。 認証を受けると、QR コードの入ったシールを食材に付けるの ですが、その対応も万全です。
ハラール認証を受けると、この シールを食材に張り法にのっ とった供給がされていること を証明できる。 シールには個別に QR コードが 付与されており、生産者のデー タを知ることも可能である
▶では、セールスに関してなにかビジョンや計画はお持ちですか?
まずはハラール食材で作ったお弁当をリリースします。 これはキッチンカーでの提供予定です。 すでに全国 52 カ所の東本願寺別院にて定配置されるキッチンカーに出店予定です。 そして 2021 年 7 月に延期開催されるオリンピックまでには、関東エリアのホテルへケータリングという形でも供給できるようにしたいですね。ホテルでムスリム宿泊客を誘致されたいなら、ハラールの食事がセットになっていると、絶対的に他社との差別化を図れますから。
構成 文:加藤壮一(週間ホテルレストラン 編集部)
(7月に続く)