ログイン
検索
  • TOP  > 
  • 記事一覧  > 
  • 真っ直ぐに突き進む三井不動産の挑戦 「HOTEL THE MITSUI KYOTO」
HOTEL THE MITSUI KYOTO

真っ直ぐに突き進む三井不動産の挑戦

2019年12月09日(月)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


2019年9月30日、三井不動産㈱は同社グループが京都市で進めているホテルプロジェクト「(仮称)京都二条ホテルプロジェクト」の正式名称を「HOTEL THE MITSUI KYOTO」と公表した。余計な飾りの全く無いその名前からは、三井不動産 “らしさ” と、同社が自ら掲げる「国内最高級のラグジュアリーホテル」に向けて真っ直ぐに突き進んでいこうという “覚悟” が感じられる。
 文・本誌 岩本 大輝
 

元禄16年(1703 年)に創建され、三井家の時代より受け継がれてきた旧梶井宮御門
元禄16年(1703 年)に創建され、三井家の時代より受け継がれてきた旧梶井宮御門


公表された名前から感じる “らしさ” と “覚悟”
 
三井不動産は2019年9月30日、同社グループが京都市で進めているホテルプロジェクト「(仮称)京都二条ホテルプロジェクト」の正式名称を「HOTEL THE MITSUI KYOTO」と公表した。以前から同社が「国内最高級のラグジュアリーホテル」と掲げるだけにそのホテル名称がどのようなものになるのか、多くの人たちの関心を集めていた。

そして、公表された「HOTEL THE MITSUI KYOTO」。この、余計な飾りのないホテルの名前からは、三井不動産“ らしさ”と同時に、三井不動産が自ら掲げる「国内最高級のラグジュアリーホテル」に向けて真っ直ぐに突き進んでいこうという“ 覚悟” が感じられる。
 


私は三井不動産およびそのグループのホテルである三井ガーデンホテルズや全国のリゾートホテルと長くお付き合いをさせていただいているが、彼らの事業に対する姿勢は、テクニカルに表面上を取り繕うようなものではなく、本質に真っ直ぐに向き合うというものだ。

宿泊主体型の三井ガーデンホテルズでは、たとえ宿泊主体型のホテルであってもホテルの基本を質の高いハードと安心・安全とホスピタリティーに置いて妥協をせず、ハード面では紋切型のホテルとなることなく、滞在経験向上のために手間とコストをかけて一つひとつコンセプトを持たせ、各地の地域性を取り入れながら機能面でも常に改善を積み重ねてきた。また、ソフト面では安心・安全とホスピタリティーに向けたトレーニングなど、人への投資を景気が良い時も悪い時も変わることなく継続している。

また、リゾート事業では、再生案件でも適切な投資を行なうが、一方で極端なコストカットをすることはしなかった。その結果、急げばもっと早く数字だけの再生は可能だったかもしれない案件を、多少時間をかけてでも雇用を守り、地域との連携を失うことなく、再生を実現するなどしてきた。近道を求めるのではなく、基本に忠実な取り組みを積み重ねているのだ。今回の「HOTEL THE MITSUI KYOTO」というストレートな名称もそのイメージと重なる。大層に飾ったり奇をてらったりすることなく、本質に真っ直ぐに向き合おうとする三井不動産“ らしさ” を感じさせられる。

​そして、もう一つは “覚悟” だ。三井不動産は「HOTEL THE MITSUI KYOTO」が国内最高級のラグジュアリーホテルを目指すと掲げているが、当然そのハードルは極めて高い。その非常に高い目標に、三井のブランドを以て挑むというのだ。三井不動産という大企業だけに、それはリスクとも考えられるかもしれない。決して失敗は許されない。三井不動産グループの威信をかけて挑む姿勢からは、“ 覚悟” が伝わってくる。
 

プロジェクトには幅広い経験を持つプロフェッショナルたちが集まった
プロジェクトには幅広い経験を持つプロフェッショナルたちが集まった


拍子抜けするくらい元気で明るいチーム
 
グループの威信をかけた一大プロジェクト。その総支配人を担うのは楠井学氏。ザ・リッツ・カールトンやパークハイアット、フォーシーズンズやマンダリンオリエンタルなど数々の外資系ラグジュアリーホテルで活躍をしてきた楠井学氏でも、さすがに大きなプレッシャーを感じているだろう。そんな想像をしながら京都の開業準備室を訪れると、楠井氏はじめ開業準備室のメンバーの元気さと明るさに拍子抜けをした。ホテル建設地近くのビル内に構えられた開業準備室では、楠井氏をはじめとした幹部メンバーが率先してチームを盛り上げている。
 
「『人のホテル』になりたい」と語る楠井氏。そこには、ハードが素晴らしいことはもちろんで、ただそれだけで選ばれるのではなく、人で選ばれる、皆から愛されるホテルになりたいという強い想いが込められている。だからこそ、総勢約230 名におよぶ社員の組織づくり、特に風通しの良さには徹底してこだわっているそうだ。総支配人というポジションであっても若いスタッフが気軽に話しかけられる存在でありたい、と常に謙虚さを意識しているという。

そんな想いの一端が表れたのは、新卒内定者とのコミュニケーションだろう。会社説明会では自ら積極的にその想いを語った。そして、そこに共感して内々定を承諾してくれた学生全員に自ら一人ひとり電話をし、感謝と自身の想いを伝えるとともに、彼らの想いも聞いた。その数は数人ではなく、なんと約70 人。とてつもない時間がかかったという。そんなことをする総支配人をかつて聞いたことはない。楠井氏がこのプロジェクトにおいていかにスタッフとのコミュニケーションを大切にしているかがよく分かる。

楠井氏から「風通しの良さ」や「謙虚さ」という言葉を聞いて、思わずなるほどと思わされてしまった。この、風通しの良さや謙虚さという言葉は、実は三井不動産にも共通をしている言葉だからだ。「人の三井」と呼ばれる三井不動産のカルチャーを良い形で受け継いだ総支配人とそのチームが、「国内最高級のラグジュアリーホテル」という高い目標に挑戦をしていく。

「外資系出身者が集まっただけのホテル」
とは一線を画したホテルづくり

 
今回のプロジェクトに集まったメンバーは楠井氏をはじめ外資系ラグジュアリーホテル出身者が中心となっている。しかし興味深いのは、彼らが自分たちの経験をそのまま使おうとはしていない点だ。

通常ありがちなのは、新しいホテルといえども総支配人を中心にそれぞれの経験の延長線上となってしまうホテル。しかし、彼らはそれを避けるために外部パートナーの視点も採り入れ、三井不動産という日本の企業が京都で目指す国内最高級のラグジュアリーホテルはどのようなものであるべきかを議論する。すでに定員の半分以上のスタッフが集まっている中で、議論をまとめていくのは容易ではないが、自分たちのスタンダードを皆で議論し、そこに徹底して向き合うプロセスが、個々の心にホテルの行動指針を刻んでいくのだ。「ゼロから創り上げるこのホテルでは『ブランドスタンダード』という縛りがありません。だからこそ、多種多様なアイデアが無限に出てくるのです。議論をする時は徹底的に時間をかけて議論します。(中略)スタッフ全員で考え、アイデアを出し、活発に議論していく。ホテルは完成に向けて着々と建築が進んでいますが、建物だけでなく、開業メンバーの個々の成長も日々感じています(『本誌 8 月30 日号42 ページより』)」という楠井氏の言葉からも、時間をかけてでも徹底して目指すべき高い目標に突き進んでいく意志を感じられる。
 

エントランスに使われる「梶井宮御門」は、福井にある藤田寺社建設の工場で宮大工たちによって300年以上前の姿が再現される
エントランスに使われる「梶井宮御門」は、福井にある藤田寺社建設の工場で宮大工たちによって300年以上前の姿が再現される


ソフトを支えるハードは
細部にまでこだわる徹底ぶり

 
当然、ハード面へのこだわりは並々ならぬものとなっている。ホテルがかつて三井総領家(北家)の居宅があったという縁ゆかりある地に誕生するということもあり、かつての三井総領家にあった多くの遺構を大切に継承しながら現代に再生させようとしている。

その代表とも言えるのがホテルのエントランスともなる、300年を超える歴史を持つ「梶井宮御門」だろう。門を解体し、京都から福井県まで運んだ。理由は、宮大工の職人集団である藤田寺社建設でその門を復元するためだ。

福井の工場では部品を「外から見える部分」と「外から見ええない部分」に分ける。できる限り昔からの姿で再現をするためだ。そして、昔のままをそのまま再現するわけではない。300 年前より技術は進化をしており、構造的には弱い部分があることも分かってくる。そういう時は、ボルトを使うこともある。過去には土だけで葺(ふ)いていた屋根瓦も、安全性を高めるためにワイヤーを使うこともある。「直す」だけでなく、「進化をさせる」。単に甦らせるだけでなく、未来に引き継いでいく。

そのような細部への徹底したこだわりが、門だけでなくホテルのさまざまなところに存在している。HOTEL THE MITSUI KYOTO ではそのストーリーを「インサイドストーリー」として採用WEB サイトで公開をしている。そうしたところからも、三井不動産のホテルづくりへの徹底した取り組みの姿勢がうかがえる。
 

ブランドコンセプトである日本の美しさを庭園でも再現をする
ブランドコンセプトである日本の美しさを庭園でも再現をする


「日本の美しさと」

 
HOTEL THE MITSUI KYOTO では、ホテルのブランドコンセプトを「日本の美しさと − EMBRACING JAPAN’S BEAUTY −」という言葉に定めた。

ハード面では客室やロビー等のパブリックエリアのインテリアデザインを、「ジ・アッパーハウス」をはじめ世界のさまざまなラグジュアリーホテルを手掛けた香港のデザイナーアンドレ・フー氏が手掛けた。「Heritage Re/Invented(伝統再生)」をテーマに、古都京都における日本の美に独自の視点から新たな価値を加え、日本のみならず海外からのゲストにも感銘を与えるデザインを追求する。

インテリアデザインだけではない。日本には「二十四節気」という言葉があり、その言葉のとおり季節と共に移り変わる庭園、またその庭とともに楽しめる食など、顧客体験にもこだわる。1300㎡の中庭では庭と建物が一体となり美しく調和しているさまを表す「庭屋一如」という言葉を体現すべく、マスターデザインアドバイザー粟生明氏とともに、ランドスケープデザイナー宮城俊作氏が三井家の時代から受け継がれてきた庭を現代に再生する。その中庭では季節を彩る草花の景観はもちろん、花の香り、風や水、虫の鳴き声など音までも感じることができるものになるという。
 

温泉を掘削して誕生した「サーマル・スプリングSPA」
温泉を掘削して誕生した「サーマル・スプリングSPA」


さらに、HOTEL THE MITSUI KYOTO が力をいれたのは敷地内の源泉を活用した温泉SPA 施設「サーマル・スプリングSPA」だ。このホテルにしかない特別な体験を提供するために温泉まで掘削したSPA では赤尾洋平氏がデザインを手掛け、「山紫水明の都 京都」を表現すべく、石、音、水、光が一体となった美しい約1000㎡の空間の中、京都ならではの温泉体験を提供するという。

三井不動産が力を入れるプロジェクトということもあり、ハード面においては素晴らしいホテルができるのであろう。しかし、同社が掲げる「国内最高級のラグジュアリーホテル」となるためには、組織文化に起因する人のクオリティー、そして、それによって生み出される空間の雰囲気など、ソフト面にかかっているとも言える。

オーナー、オペレーターが一体となって高いハードルに挑戦をするこのホテルプロジェクト。グローバルチェーンばかりが席捲する日本のラグジュアリーホテル市場に風穴を開けることができるのか、注目をしたい。


HOTEL THE MITSUI KYOTO 
https://www.recruit.nijo-hotelproject.com/



「HOTEL THE MITSUI KYOTO」概要(予定)
ホテル名称 HOTEL THE MITSUI KYOTO(ホテル ザ 三井 京都)
開業日:2020 年夏
所在地:京都市中京区油小路通二条下る二条油小路町284
客室数:161 室
料飲施設:オールデイダイニング/シグネチャーレストラン /
スパ:サーマル・スプリング(天然温泉を利用した温浴施設)/プライベート温泉2 室/トリートメントルーム4 室
その他施設:バー、フィットネスジム など
総支配人:楠井 学
運営会社:三井不動産リゾートマネジメント㈱
 
 

週刊ホテルレストラン最新号
2020年07月24日号
2020年07月24日号
本体1,650円(税込)
【特集】“withコロナ”時代を生きる外食産業の店舗運営と展望
【トップインタビュー】
クージュー(株)代表取締役 CEO/ EGGS 'N THINGS JAPAN(株…

■業界人必読ニュース

■アクセスランキング

  • 昨日
  • 1週間
  • 1ヶ月
CLOSE