(株) JAPAN CRAFT SAKE COMPANYは、世界的な和食ブームに伴って国内外で人気が高まる日本酒について、低温輸送による国内から海外への物流、倉庫での冷蔵保管、倉庫から飲食店までの保冷輸送、飲食店での品質管理及び日本酒専用セラー「SAKE CELLAR」の導入など、さまざまな事業を行なっている。そして日本酒のおいしさを守るため、ディストリビューターと協力し、海外における高品質な日本酒の物流環境の整備に取り組む。
代表取締役の中田英寿氏は「日本の可能性を世界に、未来に伝えていきたい」をビジョンに掲げ、日本が世界に誇るべき自然や文化、その中で育まれた伝統や技術を伝える方法に関して、今の時代ならではの新しい形で創造することを目指す。全国各地で受け継がれてきたかけがえのない日本の財産を世界に、そして未来に伝えるためにできることを追求する中で、蔵元が繊細な温度管理で造ったおいしい日本酒を最高の状態で消費者に届けるための方法についても、多面的なアプローチを通じて実現しようとしている。
大事なのは情報を伝えることだけではなく、情報を伝えなくても済むツールを創ること
---日本酒のおいしさを最大限に保つために開発された「SAKE CELLAR」が必要だと思った理由を教えてください。
僕はもともと日本酒の造りについて興味を持っていましたが、実際に日本全国の酒蔵をまわり始めたことで造り以外のいろいろな面にも気づきを得ることになりました。たとえば「酒蔵ってこんなに寒いところなんだな」と感じるわけです。もちろん冬場に酒造りをするという前提はあるにせよ、空調を使ってさらに冷やしている。その環境の中で、できた酒を冷蔵庫の中に入れて冷やしている。「どうしてこんなに冷やしておくのだろう?」と思って尋ねると、僕がおいしいと思っている酒蔵の方ほど「繊細な日本酒は低温管理が大事」と特に強調して答えてくれるのです。
ところがレストランを見てみると「冷やしていない日本酒もたくさんあるよな」という疑問が発生するのです。しかも同じ酒なのに、酒蔵で飲む味とレストランで飲む味の間に違いがあるという経験も多々ありました。
そこでワインのことを考えてみるとワインセラーというものがあって、やはりきちんとした温度管理が必要なのだとあらためて気づかされるわけです。では、どうしてワインセラーが開発されたのか。たとえばフランスから海外にワインを輸送する際、当然のことながら昔はリーファーコンテナなど使ってはいませんでした。だからワインが途中で悪くなって、返品されることもよくあったそうです。また到着したワインを正しい温度で管理できなければ、長期保存ができずに価値が下がってしまうという悩みもあったということです。
そう考えると現在のワイン業界の姿が出来上がった背景として、ワインセラーの存在が最も大きいと僕は思うのです。従来は単にワイナリーで寝かせていただけだったワインを、ワインセラーでもっと長く保存できる環境が生まれたことこそがワインの価値を高め、現在のワイン業界を創造したのだと考えています。