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SORANO HOTEL / 立飛ホスピタリティマネジメント

「逆さまなホテル」を創る①

2019年11月12日(火)
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観光客がこない土地に、価値あるホテルを生み出す

株式会社立飛ホスピタリティマネジメント
取締役COO 坂本裕之氏


東京・立川市に本社を置く㈱立飛ホールディングスは、立川駅北側で計画が進行中の「立飛みどり地区プロジェクト」において、新しい街区「GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)」を開発している。同プロジェクトは多摩地区最大規模となるホール、新たに掘削した天然温泉を使ったインフィニティプールが特徴のホテル、商業施設、オフィスなどで構成された大規模複合開発プロジェクト。2020年以降、「心身ともに健康的で心地よい、人間らしい暮らしへのニーズ」がますます高まると考え、「空と大地と人がつながる、ウェルビーイングタウン」を新しい街のコンセプトとしている。

GREEN SPRINGSの一つの核となるホテル「SORANO HOTEL」は、81の全客室が52㎡以上、バルコニー付きで、窓からは昭和記念公園の豊かな緑を一望できる。立川の街との共存共栄を大前提とするSORANO HOTELは、既存の施設と競合しない新しい価値を生み出す使命を担っている。その実現のためには、従来のホテルの常識から解き放たれた発想で「逆さまなホテル」を創ることが求められたのだ。ホテルづくりの指揮を任されたのは、プロフェッショナルホテリエとしてこれまで数々のホテルの開業や改善計画に携わってきた坂本裕之氏。空と大地と人がつながる「ウェルビーイングホテル」をコンセプトに、「空」を感じ、開放的で心地よいホテルを目指すSORANO HOTELに込められた思いをレポートにし、二回にわたってお送りする。

「ホテルマンになるな、商売人になれ」

株式会社立飛ホスピタリティマネジメントの取締役COOを務める坂本裕之氏は、プロフェッショナルホテリエとして長年のキャリアを積み重ねてきた。ホテリエ人生をスタートさせた神戸ポートピアホテルでは、当時の社長から「ホテルマンになるな、商売人になれ」と言われ続けた。

坂本「単なるホテルマンではなく、商売のわかるホテルマンになれ」と言われたのですが、要するに「商売人になれ」というアドバイスでした。商売とは読んで字のごとく「飽きないものを売る」ということ。飽きないものを売るためにはどうしたらいいのかを追求し、ゲストの満足度を考えながら、儲けることも考えるように求められたのです。当時顧客満足度という言葉すらない時代に。
そして商売人として生きていくためには、常に損益計算書が頭の中に入っていなければならないことを学ぶ機会をいただきました。

その後ハウステンボスにあるNHVホテルズインターナショナルからお誘いの声が掛かる。
 一度は誘いを断わったものの、誘ってくれた会社の社長が出版する予定の原稿を読み、その考え方に共感し、転職を決意する。6年間ハウステンボスで経験を積んだ後、家庭の事情もあり神戸に戻り、ウェスティンホテル淡路の開業準備に携わることになる。

 
坂本 ウェスティンホテル淡路で私がやりたかったことを振り返ってみると、今まさにSORANO HOTELでやろうとしている要素がかなり詰まっています。ただ当時は、ホテル業界に背くような考え方は良くないと一掃され、成就することは叶わないこともありました。
 
 次なる挑戦は、JR西日本が手掛けるホテルグランヴィア京都における経営強化の仕事だった。当時の使命は、開業年から2年を経過しても計画通りに進まないことに対する改善であった。

坂本 新しいチームで作成した5か年経営計画を推し進めた結果、2年前倒しの3年間で目標を達成することができ、そこから新たな5カ年計画を進め経営強化につなげることができました。この成功は私の力ではまったくなく、スタッフの皆さまの力によってプラスへと転換できたのだと思っています。働きやすい環境にすることこそが改善の最善策であると考え、スタッフの意識を変えることに注力しました。
 
 軌道に乗ったホテルを後にして、新たな事業に挑戦するために坂本氏は北海道に渡り、ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパに向かうこととなる。ここでは志半ばにしてホテルを売却する話が持ち上がり、残されたスタッフの転職に尽力することとなる。一段落したところで京都に戻り京阪ホテルズ&リゾーツからお声がけいただき京都センチュリーホテルに着任することとなる。

既存の施設と競合しない 新しいホテルを創る

坂本 そうしている間に、立飛ホールディングスから「立川に来ないか」という話が舞い込みました。私としては立川に行く理由がありませんでしたし、京都に魅力も感じており、琵琶湖ホテルの経営にも携わっておりましたので、京都から離れる理由がないためにお断りして参りました。

「立川にホテルを創る」ということだけが目的であれば、私はお引き受けしなかったと思います。ところがそうではなく、社長が目指していたのは「立川の都市格をあげる」ことが大きな目的であったのです。「グリーンスプリングス(GREEN SPRINGS)」という新しい街を立川の地に創るにあたって、その一翼を担うホテルを担当することが私に求められた仕事でした。そういうことならと、SORANO HOTELの開業に向けて、私も一員として加えてもらい、走り出すことに決めました。
 
 ホテルを創るにあたって大前提となったのは、立川の既存のホテルやウエディング施設と競合しない即ち、共存共栄を前提に、他の施設を脅かさないことが条件でした。
 
坂本 SORANO HOTELを含めて、グリーンスプリングスのコンセプトは「ウェルビーイング」となりました。ウェルビーイングは経済産業省が提唱している「心身的、精神的、社会的に良好な状態」を指す言葉であり、ウエルネスよりもさらに総合的に豊かな状態を示す新しい価値観です。

 SORANO HOTELでは「ウェルビーイング思考の方々」をターゲットにしたアプローチを推進することで、既存の施設とかぶらない差別化された価値を提供していきます。そのため私たちは、「ウェルビーイング生活をする方々にとっての魅力」について考える必要があるのです。

 まず、都心からホテルまでの移動について、あまり気にならない距離にあることが求められるでしょう。立川の立地を説明するときに「新宿まで30分」と言えば、それほど気にならないと思います。それから移動距離を一番気にしないのは海外から来る外国人ですから、インバウンドゲストは大きなターゲットになるはずです。
 国内需要では、時間とお金に余裕のあるアクティブシニアのご夫婦や、都心に住む30代、40代の子育てファミリーが想定されるでしょう。
 
 子育てファミリーをターゲットの一つに据えた理由は、個人旅行が増えている中で、都心から30分で行ける手軽な旅行を提案できる点にある。子育てファミリーが旅行に求めるものを満たすコンテンツをそろえることができれば、SORANO HOTELを目指して立川に訪れるファン層を形成することができると踏んだのである。
 
坂本 ファミリーを考える上で一つのポイントとなるのは、ワンちゃんを家族の一員と考える人々が増えていることです。当初は計画に入れていなかったのですが、「ドッグフレンドリールーム」を備えることにしました。

「ドッグフレンドリールームを1室造りたいと思います」と愛犬家でもある社長に相談したところ、「1室というのは、本心ではやりたくないという気持ちの表れでしょう。3室以上造ればよいのでは。」という助言を賜りました。ドッグフレンドリールームを3室造れば、間違いなく稼働率は厳しくなることは予測されます。しかし稼働率を上げるという目先の目的よりも、ゲストへの感動を与えることを優先したのです。
私たちは目先のことではなく、先々のことを考えてSORANO HOTELを創る使命を担っています。その上で商売としては、もちろん結果を出さなければなりません。

 

SORANOホテルはスタッフを募集しています。
コンセプトはWell-being、 心にもからだにも健やかであること。
ゲストにも環境にも、そしてスタッフにも!ぜひ応募ください!
https://www.hotel-ya.com/jobs/a13/soranohotel/company

 


【本レポートは3回に分けてご紹介をしています】
1.「逆さまなホテル」を創る① 観光客が来ない土地に、存在感のあるホテルを生み出す(今回)

2.「逆さまなホテル」を創る② 観光客が来ない土地に、存在感のあるホテルを生み出す

3.「ウェルビーイング」をFBにおいていかに具現化していくか。オープンに向けて胸が高まる



■ホテル概要
名称:ソラノホテル(SORANO HOTEL)
運営会社:株式会社立飛ホスピタリティマネジメント
所在地:東京都立川市緑町3-1 W1 SORANO HOTEL
オープン日:2020年5月12日
客室数:81室
公式サイト:https://soranohotel.com/

■プロフィール
株式会社立飛ホスピタリティマネジメント
取締役COO 坂本裕之氏
1980年神戸ポートピアホテル フレンチレストラン「アランシャペル」などを経て、人事総務などバック部門でもマネージャーとして経験を積み、92年ハウステンボス・ホテルヨーロッパ料飲部迎賓館担当、95年に料飲部長、97年ホテルヨーロッパ支配人に就任。ホテルヨーロッパの総指揮のみならず、ハウステンボス5ホテルのサービス部門統括も担う。98年ウェスティン淡路の開業準備室、室長代理を務めた後、99年 ホテルグランヴィア京都に迎えられ、2001年には取締役副総支配人に就任。以降、様々な要職を務め、JR職員以外のプロパーとしては初めて08年常務取締役総支配人に就任。11年にザ・ウィンザーホテルズ インターンショナルに、取締役総支配人として迎えられるまでその辣腕を振るう。ザ・ウィンザーホテルズで3年間総指揮をとり、ホテル売却のタイミングで、15年京都センチュリーホテルに取締役常務執行役員として迎えられ、同年6月には代表取締役専務に昇格。グループのフラッグシップホテル開業準備も併せて担う。現職には17年7月から着任。

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