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サンペレグリノ ヤングシェフ 2020 開幕直前!

サンペレグリノ ヤングシェフ 2020 開幕直前!セミファイナリストに選出された 日本人二人とメンターが‟ひと皿”に込める想いとは

2019年09月03日(火)
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2015年に始まり、今では世界で腕を試す登竜門として、国内外の若手シェフ数千人がエントリーする「サンペレグリノ ヤングシェフ」が今年も開幕する。4回目となる今大会は、「美食文化はもはや厨房を超え、世の中に変革をもたらす力を持つ」ことに着目し、ひと皿で世の中に変化をもたらす、強いメッセージを発信できる料理を創造できる若手料理人の発掘がミッション。また大会の形式も変化し、地区大会が21カ所から12カ所での開催になったことで、中国・台湾・香港をのぞくアジア地域から料理写真と書類審査で選出されたインド、インドネシアも含む7カ国15人が凌ぎを削る国際大会となり、東京で開催される。

さらに賞についても、ミラノで開かれる決勝大会に参加できる「サンペレグリノ ヤングシェフ(最優秀賞)」に加えて、美食家からのオンラインコミュニティ「ファイン・ダイニング・ラバーズ」からの投票で、食に対する信条を見事にひと皿に表現したシェフに贈られる「ファイン・ダイニング・ラバーズ賞」、食のサスティナビリティにおいて、社会的影響力を提唱するひと皿を称える「サンペレグリノ賞」、メンターシェフが「よりグローバルな観点で異文化の交わりが表現されている」ひと皿を称える「アクアパンナ賞」と三つの副賞が新設。一方で、地区大会から所属レストランの上司シェフがメンターとして同席、指導する方式も採用され、より挑戦者が実力を発揮しやすい環境が整えられた。

またこの大会では、前回「夏の鮎」をテーマにしたシグニチャー・ディッシュで日本人の藤尾康浩シェフが見事栄冠に輝き、世界から日本の挑戦者に対する関心が高まっている。そんな中今年は、セントレジスホテル大阪、ホテルオークラ京都と関西の2ホテルから、奇遇にも今年最後の挑戦となる30歳のシェフ二人がセミファイナリスト。そこで9月10日、東京で開催されるアジア大会の直前の今、熱い意気込みと、‟ひと皿”に込めたメッセージについて、挑戦者とメンターに聞いた。

セントレジスホテル大阪 ■挑戦者 ル ドール料理長  駒路 和司氏 ■メンター 総料理長 ジャンルカ・ヴィサーニ氏

―コンテストに参加された経緯を教えてください。
 
駒路/前回大会に「自分の実力を試したい」という気持ちで初出場させていただいたのですが、時間がかなり押していて、予期しないタイミングでいきなり「仕上げてください」と声がかかり、自分で時間のコントロールが出来ずにベストな状態で提供することができなかったことが心残りでした。今回は30歳で挑戦できる最後の年になりますし、そのリベンジをしたいという強い思いで挑んでいます。当日のハプニングにも対処できるよう、仕込みに時間をかけ、仕上げはできるだけシンプルに…と対策も立てました。対策を考える上では、前回大会はシェフ・ド・パルティでしたが、現在はシェフとして厨房を回していくうえで、全体のオペレーションなどを考えるようになったことも非常に役立っていると思います。
 
―ヴィサーニシェフはどのようなアドバイスを。
 
ヴィサーニ/一つは自分の原点である日本を大切にすること、もう一つは、日本の技術とフレンチの技術をうまく組み合わせて取り組みなさいということです。審査員が全員国際的に活躍されている方々で、しかも今回はアジア大会とより国際的になったので、その舞台で戦うという意味では、自分のアイデンティティはメッセージとして強い武器になります。特にメッセージ性を問われるコンクールでもありますので、そのあたりを重要視するようアドバイスしました。それからこれは普段の仕事のスタンスにも通じますが、私がいつも大切にしているのは、「自分のやっていることを好きでいること」です。それが成功の鍵の99%を握っていますので、日々そのことを自分自身に問いながら取り組みなさいと伝えました。それ以外は彼自身の考えがありますし、技術も十分備わっているので、細かなアドバイスは必要ありません。お客さまの立場で試食して、味についてフィードバッグするくらいです。駒路シェフのように才能ある若いシェフというのは、アーティストのようなもの。彼の素晴らしい腕、技術、才能を信じており、彼が好きなようにやるのが一番だと思っています。
 
―今回の‟ひと皿”に込めたメッセージとは。
 
駒路/日本の鯖のおいしさを広く世界に知っていただきたいという想いです。使っている食材はすべて日本産ですが、その中でも大分県の「関さば」を世界に発信したいと考えました。日本で鯖はなじみ深い食材ですが、2011年に起こった東日本大震災や一昨年、昨年の自然災害で、普通の鯖だけでなく、鯖缶の重要性が再認識されています。しかし海外では食材としてあまり認知されていないので、その鯖をもう少しポピュラーなものにできればと。日本随一のブランド鯖であり、生でも食べられるような新鮮な「関さば」のおいしさをもっと認知していただきたいと考えています。鯖は旬が長く、今大会の9月と来年の本戦の6月、どちらにもシーズン的にいい状態のものが入手できることも決め手でした。
 
―具体的な料理の内容について教えてください。
 
駒路/脂の乗った鯖を低温でコンフィして、少しねっとりとした食感に仕上げています。そこに日本産のスパークリングワインのジュレをまとわせ、ブルーチーズのソースを添えました。実は自分の中で、サバ、ブルーチーズ、シャンパンは王道の組み合わせで、味に厳しいお客さまにもとても喜ばれています。フランス料理では珍しい組み合わせですが、スパークリングワインの酸味が心地よく、またブルーチーズは豆乳で伸ばしているので非常になめらかで上品。どちらも鯖とのマッチングは絶品です。その味わいを引き立てる名脇役として、湯葉とトリュフのデュクセル、ポワロ―、北海道産インカのめざめと大葉を使ったミルフィーユと、日本産の宮崎キャビアを。さらに酸味を補うために、ルビーオニオンとパールオニオンのピクルスも添えました。とても美しい一皿に仕上げることができたので、審査員の皆さまに早く召し上がっていただきたいですね。
 
ヴィサーニ/テクニックは全てフランス料理のものですが、日本の繊細な美しさを象徴しており、日本の厳選された食材を今までにないようなテクニックで仕上げているところも、非常に日本的だと思います。また私から見ると、この料理に使われている食材がなんなのか、提供された際にパッと分かるシンプルさも、日本らしさを強調するうえで大切なポイントではないしょうか。本当に、日本のシンプルさにはいつも驚かされます。寿司も、魚と米と醤油でできていて、非常にシンプルですよね。日本について学ぶにあたり分かってきたのは、このシンプルであることこそ、力量が問われる大変なことであるということです。
 
―今は最終調整の時期ですが、どのように準備を。
 
駒路/料理の試作はこれまで何度も重ね、非常に納得がいくものができたので、もう変えるつもりはありません。今の課題はプレゼンテーションですね。経験豊富な海外の審査員の方に、サービスを含めて10分間の与えられた時間で、英語でどう自分の想いを伝えるか。言いたいことはいろいろありますが、それをなるべくシンプルに分かりやすく、と心がけて、必死に練習しているところです。このコンテストで自分の人生が変わるといっても過言ではないと思いますので、残り2週間、集中して取り組んでいきたいと思っています。

料理名はシンプルに「Beyond」。潮流の早い豊予海峡を生き生きと泳ぐ関さばを思わせる、一枚のアートのような世界が広がっている
料理名はシンプルに「Beyond」。潮流の早い豊予海峡を生き生きと泳ぐ関さばを思わせる、一枚のアートのような世界が広がっている

駒路 和司氏
駒路 和司氏
ジャンルカ・ヴィサーニ氏
ジャンルカ・ヴィサーニ氏

駒路 和司(Kazushi Komaji) プロフィール
辻調理師専門学校フランス校に学び、「ポール・ボキューズ」で半年間研修の後、ミシュラン史上最速で三ツ星を獲得した「HAJIME」に入店。計算され尽くしたガストロノミーの世界を経験後、ホテルの非日常なサービスや料理を学ぶために「ル ドール」へ。さらに、「人生で一番最初にフランス料理を味わい感動した」というザ・リッツ・カールトン大阪「ラ・べ」でも1年研鑽を積んだ後、16年に「ル ドール」へ復職。17年にスーシェフとして実質トップに立ち、19年2月に料理長に就任した。16年「食の都・大阪グランプリ」で優秀賞を受賞、「サンペレグリノ ヤングシェフ2019-2020」で2年連続セミファイナリストに選出。



 

京都ホテルオークラ ■挑戦者 京都ホテルオークラ 調理部 レストラン調理課 スカイレストラン ピトレスク 係長 土谷 真敬氏 ■メンター 調理部次長 スカイレストラン ピトレスク 料理長 玉垣 雄一郎氏

―コンテストに参加された経緯を教えてください。
 
土谷/参加には30歳以下という規定があり、30歳の今年が最後のチャンスだと初めて挑戦しました。ほかのコンテストは年齢制限がなかったりするなかで、若いシェフだけで競う国際的な大会というのは、非常に魅力があったことも理由です。またこの2月には、勤めている「(株)京都ホテル」内で、全セクションの調理スタッフを対象に行なわれた料理コンテストに参加し、魚料理とデザート部門、両方で優勝したことも大きなきっかけとなりました。8月には、同じく世界的な料理コンテストである「ボキューズ・ドール 2021」の日本代表選考・西日本予選にも参加し、10月14日に実施する第3次実技審査決勝への進出が決まりました。
 
―玉垣シェフはどのようなアドバイスを。
 
玉垣/料理は誰かに召し上がっていただくものなので、要素としては見た目や香りも大切ですが、私はやはり食べ手がおいしいのが一番だと思っています。ですから基本的に、味についてのアドバイスしかしていません。その誰かが普段でしたらお客さまですし、コンテストでは審査員の方です。お客さまでも年配、若い方、さまざまなシチュエーションに合わせて一回一回料理を考える必要がありますよね。それが今回はコンテストのシチュエーションで評価される料理であるだけだと考えています。日々の仕事の延長、集大成というか、普段やっていることとスタンスは大きく変えなくともよいのではないでしょうか。ただ味については、何度も試食し、「もっと味のメリハリがついていないとダメだよ」など、おいしいか、おいしくないかをはっきり言っています。審査員は全員世界で活躍する舌の肥えた方ばかりですので、やはりそこは突き詰める必要があります。土谷シェフはそれプラス、自分のエスプリを取り入れてどんどん進化させていっており、普段の業務もあり大変でしょうけど楽しそうにやっているので、もっともっと積極的に挑戦してほしいと願っています。
 
―今回の‟ひと皿”に込めたメッセージとは。
 
土谷/今日本全国で問題になっていますが、地元京都、美山でも深刻な問題になっている、鹿や猪による農作被害ですね。現在は個人の猟師さんが対策をしているところが多いのですが、後の解体処理に技術が必要なことや、人員不足でどうしても処理しきれず、毎年どんどん増え続けています。さらに狩猟で捕まえた害獣も、解体処理が追い付かず、殺しておしまいになってしまっていることが多いです。そういった困難な現状を、ぜひ広く世界に知ってもらいたいですね。今回の料理に使っている鹿と猪は、美山で一年前に獣害対策の組合を立ち上げられて、それも猟師する方、解体する方を入れて10人しかいない小さなものですが、その組合のご協力で使わせていただいているものです。この組合の尽力もあり、京都では「もっとジビエを食べてもらおう」という動きが非常に盛んになっています。
 
玉垣/鹿をもっとおいしくできたらみんな食べると思いますから、そこはわれわれ料理人の大きな役割ですよね。そもそも「おいしくない」と思っている方が多く、みなさん敬遠されていますが、今は解体の技術や品質もすごく上がって来ています。食材として、まだまだ大きな可能性を秘めているのではないでしょうか。
 
―具体的な料理の内容について教えてください。
 
土谷/美山の鹿肉、猪肉を有馬山椒やみりんで味をつけたネギと山椒を巻いて、コンソメ仕立てにしています。コンソメにはビーツのエキスを入れて、赤色に仕上げました。スープの下には椎茸と麴の茶わん蒸しが隠れており、ジビエとの、風味や食感のコントラストを楽しんでいただけると思います。味のポイントとしては、山椒や塩麹、木の芽、生姜など和のスパイスを使い、さらにコンソメにも昆布や干しいたけで旨味を追加して、ジビエの野性味を際立たせながらもおいしく味わっていただける、という内容です。香りとしては、まだ試行錯誤の最中ではありますが、九条ねぎのパウダーを使って、秋の野草の青い香りをまとわせる予定です。
 
――今は最終調整の時期ですが、どのように準備を。
 
土谷/プレゼンテーションが全て英語なので、その準備に追われています。昔少し勉強してはいたので聞き取りは大丈夫なのですが、普段話す機会はなかなかありませんので…。今急いで昔通っていた英会話教室に再び通って練習をしています。提供からプレゼンテーションを含めた10分の持ち時間をめいっぱい使って、なるべく簡潔に想いを伝えたいと思っています。
 
――玉垣シェフがメンターとして期待されていることとは。
 
玉垣/土谷シェフは、これからの京都ホテルオークラを担っていく人材だと思っています。コンテストは短い時間で効率よく作業をすることを求められますから、ホテル全体の生産性を上げる面においても段取りが良くなりますし、原価計算もできるようになります。つまり、飛躍的に個人の能力をアップする貴重な機会なのです。ぜひみなさん挑戦して、後輩たちもその姿に憧れて料理を好きになり、「ああなりたい」と思って腕を磨いてくれたら、料理界全体の底上げにもつながるのではないでしょうか。彼は今本当に料理が面白いと思うんです。そういう方が増えてくれたら私たちもうれしい。挑戦は大変ですが、その先に喜びがあります。料理人は本当に好きでなければ続けられない職業ですので、色々な方に感謝しながら、頑張ってもらいたいですね。
 

「deer, wild boar and “miyama” forest, ‘the providence of nature’」。赤色が鮮やかなジビエ。提供時には和包丁のナイフが添えられる
「deer, wild boar and “miyama” forest, ‘the providence of nature’」。赤色が鮮やかなジビエ。提供時には和包丁のナイフが添えられる

土谷 真敬氏
土谷 真敬氏
玉垣 雄一郎氏
玉垣 雄一郎氏

土谷 真敬(Masataka Tsuchiya) プロフィール
調理専門学校を卒業後、(株)京都ホテル(京都ホテルオークラ)へ入社。今日まで11年間研鑽を積み、現在は係長として後輩の指導にも当たる。19年2月、同ホテルグループが創業130周年を記念して、後進育成を目的に行っている社内コンテストに参加し、魚部門・デザート部門両方で優勝。受賞メニューは特別なコースとして商品化された。同年8月には、「料理界のオリンピック」と称される世界的な料理コンテスト「ボキューズ・ドール 2021」の日本代表選考・西日本予選にも参加するなど、活躍の幅を広げている。



 

あなたの一票を!「ファイン・ダイニング・ラバーズ賞」オンライン投票サイト
https://www.sanpellegrinoyoungchef.com/finedininglovers-award/asia
「サンペレグリノ ヤングシェフ 2020アジア地区大会」出場者15名の料理とコンセプトを閲覧し、1ユーザーにつき1名のヤングシェフに投票ができる(投票は9月7日9時まで)。「ファイン・ダイニング・ラバーズ賞」受賞者はアジア地区大会終了後に発表。

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