総額20 億円を投じて行なった「下田東急ホテル」のリノベーションが今春完了、4 月21 日に開業した。1962 年に開業した同ホテルは東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)グループの伊豆急行最南端駅に位置し、55 年間この地域とともに時代の移り変わりと共にその立ち位置を変容してきたが、今回の大リノベーションを機に新たな戦略を打ち出していくという、総支配人の山本貴之氏、料飲支配人兼料理長の鈴木孝英氏に、再生した「下田東急ホテル」のこれからについて聞いた。
夏は涼、冬は温暖な下田の
「東洋のリビエラ」が再生
❐ 昨年9 月26 日から休館し、手掛けてきたリノベーションがいよいよ完成しました。改めて、開業時からの貴ホテルの地域での役割・顧客層からの位置づけと、改装前の2015 年の業績と今後の目標について教えてください。
山本 開業時から営業を続けているという意味では東急ホテルズの最古のホテルで、当時このエリアは旅館や民宿が多く、地元の宿泊業とは競合しない別の役割を担ってきました。主に吉佐美地区に居住する、在日欧米人たちの避暑地として別荘のように親しまれてきました。また1854 年ペリー提督率いる米国海軍が来航したことにちなんで、下田では78年前から「黒船祭」(毎年5 月第三土曜日の前後あわせて3 日間)が行なわれていますが、当ホテルは55 年前、つまり開業時からホテルのガーデンではセレモニーで来航する米国艦隊の前夜祭でお使いいただけるなど、昔からこの地にしては外国人比率が多い方で、2015 年のFIT は11%でした。
また業績としては、近年の下田市の人口減や観光勢力の低下に伴い少なからず影響がなかったわけではありません。特に11 年以降下降線をたどっていましたが、昨年は箱根の入山規制の反動から伊豆下田エリアにも人の流れが見られ、15 年の売り上げは9 億円でした。下田は、夏は涼しく冬は温かな地中海のような気候が特徴で、開業時のコンセプトは「東洋のリビエラ」として、ハネムーンなどにも多く利用されていました。今回のリノベーション後は、オフシーズン(夏季以外)にはリゾートMICE などを前面に打ち出していきますので、平均ADR は1 万8000 円を目指し、さらに外国人比率を15%に引き上げていきたいと思っています。