食を中心とした衣食住、ライフスタイルにかかわるすべてを通じ、より豊かな生活へのサポートをしていくことを使命とする際コーポレーション㈱。旅館事業に対する際コーポレーション㈱の基本的なスタンスは、「料理屋が旅館をやっている」という精神を忘れないということ。高級レストランの料理、それと同じレベルの料理が食べられて、さらに宿泊もできる。そんな施設の展開を目指している。「料理屋に来たお客さまに、ゆっくりと時間を過ごしていただきたい」という気持ちで旅館を開発・運営する代表取締役の中島武氏に、料理屋のスピリットを注ぎ込んだ旅館の在り方について話を聞いた。
際コーポレーション㈱ 代表取締役会長兼社長 中島 武氏
地道な商売である旅館の顔は
リピートの積み重ねが作っていく
❑ 際コーポレーションが展開する旅館事業について、これまでの推移を教えてください。
際コーポレーションが初めて手掛けた旅館である「柚子屋旅館」を2005 年10 月に京都に開業してから11 年がたちますが、おかげさまでお客さまからも高い評価をいただき、安定した経営が続いています。旅館業は地道な商売であり、メディアを使ってあおり立てるような宣伝活動はするべきではないと考えています。訪れたお客さまにリピートしていただける流れをしっかりと構築して、その積み重ねによって旅館の顔が作られていくのではないかと思います。こうした考え方のもとこつこつとやってきたことが、今のところ功を奏しているという感じがします。
柚子屋旅館の後に長崎・五島列島の上五島に開業したリゾートホテル「MARGHERITA( マルゲリータ)」は、2016 年3 月に4 年目に入りました。島の人たちのホテルとして官民一体で創った施設であり、私たちが設計、プロデュースをすべて担当し、開業後の運営も行なっています。島と一緒に生きてきた結果、経営も黒字化して順調ですが、やはり南の島なので台風が来ると船が出なくなったりといったリスクもあります。それでも“ 島の宝物” としての役割を果たすことで、「おらが島の素晴らしいホテル」として地元の方々に愛されています。雇用した島の人々も、ホテルのスタッフとして一生懸命働いてくれています。
今、上五島では第2 弾の計画が実際に立ち上がっていまして、地元の町と銀行、私たちがタッグを組んで検討をしているところです。
金沢に2015 年6 月に開業した「金澤の宿 緑草音」は新幹線の開通を意識したわけではなく、もともと地元の知り合いがいた関係で着手した案件です。緑草音は「ミシュランガイド 富山・石川(金沢)2016年特別版」で“最上級の快適 赤”を獲得しています。
さらに同じく金沢で、魯山人ゆかりの老舗旅館「山乃尾」と資本・業務提携をし、一緒に取り組みを進めることになりました。歴史ある上質な宿なのですが、時代の流れの中で特別感が失われてきてしまっていたので、土台になっている基本的な魅力を引き出す方向で施設を再構築しています。