“メルキュールのブランド”と“人の力” で業績は好調 地域に根付いたコミュニティーホテルを築き上げる
2009 年10 月にアコーホテルズの展開する「メルキュール」ブランドとして生まれ変わったメルキュールホテル横須賀。その総支配人として2010 年7 月に着任した三田村成之氏は着任後業績を順調に伸ばし続け、当初5 年計画で描いていた目標売り上げを3 年で達成したという。短期で着実な実績を生み出したその背景にはどのような取り組みがあったのか。三田村氏に聞いた。
聞き手・本誌 岩本大輝 文・アクセント 撮影・逸見幸生
人材育成がホテル経営 成功の重要な要素
❒ メルキュールホテル横須賀の総支配人に就任された経緯を教えてくだ
さい。
私が総支配人に就任した2010 年はメルキュールホテル横須賀が開業してから半年後のことでした。実は、このホテルは1993 年に横須賀プリンスホテルとして開業しました。その後運営者が変更して2008 年9 月末に一度閉館。そして2009 年にアコーホテルズのブランドの一つである「メルキュール」にリブランドし、メルキュールホテル横須賀として営業再開したという経緯を持っています。客室規模は160 室、レストラン、宴会場、婚礼施設を付帯し、インターナショナルチェーンであるアコーホテルズのブランド力と販売チャネルも備えた地元密着型のコミュニティーホテルとして歩み始めました。
それまで働いてきた帝国ホテルとは、売り上げや経費、人員配置や営業態勢などすべてにおいて違いましたので、着任時はそれらをメルキュールホテル横須賀の経営にアジャストすることから始めました。また、ブランク後、リブランドしてまもなくのホテルということもあり、ホテルにとっても私にとっても再出発だったのです。
❒ この4 年間における売り上げの推移と現状に関してはいかがですか。
就任当時からの業績を見ると右肩上がりに売り上げを伸ばすことができています。当初の計画では売り上げ目標を5 年目に達成することを目指していましたが、わずか3 年目にその目標を達成することができました。この背景には宿泊部門の堅調な売り上げ確保が寄与していると考えています。
今年度(2014 年1 月~ 12 月)の売り上げの構成比は宿泊部門が全体の57%、料飲部門が41%、その他2%を予測しています。
❒ 客室部門の売り上げが堅調のようですが、どのようなマーケットを獲得しているのでしょうか。
横須賀には米軍の基地があり、このマーケットが宿泊の安定した売り上げに結びついています。特に毎年1〜 4 月は、原子力空母「ジョージワシントン」が横須賀基地に寄港し、その際にエンジニアたちが米国から200人規模で来日して3 カ月ほど滞在します。彼らの宿泊を受注できているのが大きいですね。さらに年間を通して米軍基地関連需要の掘り起こしができたことに加え、日本人の観光需要を通年で取り込むことに成功しました。また、社内的には主要旅行代理店へのアプローチ、アコーホテルズが誇る自社サイトおよびOTAなどウェブによる客室販売の強化、客室販売コントロールのスキルアップなどが功を奏したと思います。これらにより、年間の平均客室稼働率は80%半ばを達成しています。
❒ 料飲部門に関してはいかがですか。
料飲のうち宴会の売り上げの伸びが業績に大きく貢献していますね。
料飲の半分を宴会売り上げが占めていますので。この宴会売り上げを伸ばすのには苦労しました。メルキュールホテル横須賀として開業するまでのブランクの影響が非常に大きく、その間に周辺の競合ホテルに地元の宴会需要を獲得されてしまいました。
そこで講じた策が、宴会料理にあえて和食ではなく、洋食をメインにアプローチすることでした。営業先には『毎回和食では飽きるでしょうから』と3 回に1 回は洋食の宴会を持ち掛けるとともに、競合ホテルと協議して料理による棲み分けを図りました。共存共栄の道を選んだわけです。
もちろん受注した宴会は全力投球で臨みました。そうして評価を少しずつ重ね、信頼を築いていったのです。