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2023年10月6-13日号 観光・ブライダルマーケットエリアデータファイル

2023年10月6-13日号 観光・ブライダルマーケットエリアデータファイル《全国編~オーバーツーリズム編~》

【月刊HOTERES 2023年10月号】
2023年10月12日(木)
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前回に引き続き新たに全データを更新して全国の主要都市を分析していくにあたって、最近、問題視されているオーバーツーリズムについて見ていきたい。近年のインバウンド急増にともない、話題にのぼることが多くなった。これからの持続可能な観光を考える上で備えが重要になっており、今後の観光・宿泊マーケットに影響していく可能性もある。調査データから改めてその実態を確認したい。


1.わが国におけるオーバーツーリズム

 オーバーツーリズムとは、その地域の受け入れが可能な人数を超えて観光客が流入することで、それによって地域で様々な弊害が起こる。2010年代初頭と比較すると新型コロナウイルス感染拡大前の訪日外客数は 4倍近くに増加しており、すでに京都や北海道などで、交通機関の混雑、ゴミのポイ捨て、私有地への不法侵入、ルール・マナー違反などのトラブルが起きている。
 
 日本政府観光局(JNTO)によれば7 月の訪日外客数は232 万0600 人となり、コロナ前である2019 年7 月の77.6%にまで回復した。国籍別に見ると、中国は29.8%に留まるものの、円安による割安感もあって、100%を超えてコロナ前の水準を上回っている国が幾つも見られる。最大マーケットである中国が回復すれば、コロナ前の水準を上回るインバウンド規模となる可能性がある。

 観光庁ではオリンピック・パラリンピックの開催を控えた2018 年に「持続可能な観光推進本部」を設立して対応を検討・推進してきた。19 年のG20 観光大臣会合では、観光政策の重心を成長から持続可能性に転換することを合意。また、国連世界観光機関(UNWTO)は持続可能な観光はSDGs すべての目標につながっているとしており、目標の達成に重要な役割を担っているとしている。
 
 もっとも、コロナ前はインバウンドの急増による経済効果への期待にかき消され、あまり表だってオーバーツーリズムは言われてこなかった。本格的に言われ始めたのはコロナ禍になってからで、改めて冷静に持続可能な観光地のあり方を考えられるようになったと言える。国は新たな「観光立国推進基本計画」で「量より質」を重視する方針を示し、オーバーツーリズムの観点からも量への依存から脱却するとした。8月26日には岸田総理がオーバーツーリズムへの対策を国の重要課題とし、対策をとりまとめていくと表明している。
 
 オーバーツーリズムは世界の観光地共通の課題である。わが国のオーバーツーリズムのレベルはどの程度なのか? 2018 年にUNWTO が世界の主要15カ国の居住者を対象に実施した、観光が地域に与える影響についてのアンケート(※ 1)において、わが国はポジティブな影響である「経済的に豊かになった」、「文化交流の創出」、「新たな観光アクティビティの創出」、「雇用の創出」について、いずれも15 カ国中最も低いレベルとなった。(図表1)
 
 ネガティブな影響である「通りや店、交通機関の混雑」、「家賃の高騰」、「物価の高騰」も最も低いレベルで、「交通機関の値上げ」もフランスに次いで低いレベルである。世界の観光地と比較すれば、日本は観光が地域に与えている影響はポジティブ、ネガティブ、いずれもまだ低いレベルと言える。(図表2)
 
 また、観光庁が実施した調査においては、日本人に対して「観光地で訪日外国人旅行者が増加したという情報が旅行判断にどう影響したか」と聞いたところ、「国内旅行への影響がほとんどなかった」との回答が最も多い結果となった。

「検討していた旅行自体を見送ったことがある」、「代わりに国内他地域への旅行にしたことがある」といった影響は10%前後見られる。(図表3)

 観光庁では世界基準から見て、日本では全国的な傾向として深刻なオーバーツーリズムにはなっていないと判断しているが、それは地域によって異なるとしている。オーバーツーリズムは観光によるポジティブな影響とネガティブな影響のバランスによって問題化するもので、地域の受益を住民が期待している場合は大きく問題化しないこともある。日本は観光ライフサイクルで成長期にあり、今後、確立期に入っていくに従い、弊害が深刻化していく可能性がある。結果的に観光地としての評価を下げることにつながるため、現時点での備えが必要と言える。

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※各種図表など詳細なデータにつきましては本誌ご購入いただけますよう、お願い申し上げます。
 
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