本文でも紹介した「En Dance Studio」を支える世界的に活躍するダンサーたちから、 Yumeno 氏、GANMI のSota 氏、YeEun 氏(写真左から)
今夏開催された「東京2020 オリンピック」において圧倒的に光っていたのはスケボーやサーフィンといった新規種目の存在や選手たちだった。これまでともすれば“ 不良のイメージ” と抱き合わせで捉えられてきたスケボーがメダルラッシュとなるやいなや、選手たちが身につけていたユニフォームは完売となり、スケボー教室への問い合わせが一気に増えたという。勝てば官軍とはこのことだが、“ 勝ち戦” についての認知が一定のコミュニティに限られ、今の若い世代、特にミレニアル、Z、ジェネレーションαといわゆる“ 大人たち” の間に価値観や評価に乖離のある世界のひとつがダンスではないだろうか? そこで今回は「東京2020 オリンピック」の開会式でのパフォーマンスが話題を呼んだ「東京ゲゲゲイ」ともコラボし、数多くの有名ダンサーを輩出している「En Dance Studio」にお話を伺った。
KPOP の爆発的ヒットの縁の下に
日本人コレオグラファーの活躍あり!
子供たちが将来なりたい職業にYoutuber やe スポーツプロレイヤーを掲げるようになって数年が経つ。昨今ではそこにボカロP やゲーム実況者といった新たな選択肢もランクインしてきている。このように若い世代の価値観が大人世代の価値観や知見とは全く違ったものになってきている現象はアイドルを目指す少年少女たちにも見られるという。将来的にアイドルとして有望な子ほど今はKPOP 業界でのデビューを目指す。また彼らがロールモデルとして掲げるアイドルもBTS やBLACKPINK、TWICE などそのどれもがKPOP アイドルであり、そこにAKB グループやハロープロジェクトの名前が上がらなくなっているという。そんなKPOP 業界について大人たちの多くが知らないことがひとつある。それはKPOP の魅力の要でもある高レベルなダンスの振付を多くの日本人ダンサーが手掛けているという点だ。
その点について「En Dance Studio」に伺ってみると「解りやすいところで言うと先日、5 つのギネス記録を更新し、米ビルボードのメインシングルチャート『ホット100』で9 週連続1 位(※取材当時)をとったBTS の“Butter”の振付に参加し、世界大会の優勝経験もあるダンスクルーGANMI のSota はわが校の卒業生です。コラボダンサーの仲宗根梨乃は美脚ダンスで話題となった少女時代の“GENIE”に始まり、最近ではNCT127 の振付を担当するなど数多くのKPOP アイドルの振付や舞台演出を手掛けていますし、当校でよくワークショップを開催しているRIEHATAもBTS やTWICE、NCT、Red Velvet などを韓国のトップアイドルの振付を数多く手がけていますね。もちろんまだまだ数多くのダンサーたちがKPOP のヒットソングの振付にかかわっており、日本人ダンサーたちが作り出す振付の独創性やクリエイティブの素晴らしさや実力は国内のみならず海外で大きく評価されています。さらに昨今ではダンスの世界大会で優勝経験を持つダンサーも増えています。当校のインストラクターにも優勝経験者が何人もおり、彼らに憧れてレッスンに通う生徒も多くいます。授業の最後にインストラクターがその日の課題曲を一緒に踊りたい生徒を“ピック”するというものがあるのですが、ピックされた子は先生と一緒に踊る様子を動画撮影してもらえるので、それを自身のSNS にアップしたくて頑張る子も多いですよ」。
アジア、そしてグローバル市場で活躍できる人材育成
ここで少し「En Dance Studio」について説明したい。同校は全国に4 拠点を持つ世界のダンス業界から認知される日本を代表するダンススクールだ。先述したコラボダンサーをはじめとする著名ダンサーたちを含む約150 名のインストラクターが所属し、コロナ前は世界中から外国人が毎月200 人ほどがレッスンを受けに来校していたという。その中には仕事で来日していたKPOP アイドルたちも多くおり、レベルの高さが伺える。
さらに日本初の短期集中ダンスキャンプ「EN Dance Camp Plus」等のワークショップにはTWICE の“TT”ダンスの振付で有名なLia Kim 氏をはじめとする世界的に活躍するダンサーも多く参加しており、同校が世界からいかに注目されているかが解る。その証拠に「PRODUCE 101 JAPAN season1」を経てJO1 メンバーとしてデビューした川尻蓮氏やグローバルアイドル育成プロジェクト「G-EGG」を経てNIK メンバーとしてデビューした三浦史也氏など卒業生やインストラクター経験者たちの活躍も華々しい。最近では講師陣の中から中国の人気オーディション番組「創造営2021」にSANTA 氏とRIKIMARU 氏の二人が挑戦し、最終順位で2 位と3 位でデビューグループINTO1 のメンバーとなり、現在中国では「テンセント・東京オリンピック報道大使」に就任している。
さらにパワフルなのが本年5 月、渋谷「RAYARD MIYASHITA PARK」内に登場したK-POP のカバーダンス/コレオ(※コレオグラフィー、振付のこと)に特化したダンススタジオ「NEXTinDANCE(通称NiD)」の存在だ。講師にはNCT-U やStrayKids 氏の振付師のReiNa 氏、TWICE やITZY のサポートダンサーを務めるYumeno氏、SHINee テミンのサポートダンサーshun 氏、世界大会優勝経験者のRina 氏、毎回レッスンがキャンセル待ちになるほど大人気講師のHOnOKA 氏、BTS のサポートメンバーを経験した韓国人ダンサーのYe Eun 氏などそうそうたるメンバーが名を連ねている。
同スタジオではKPOP の曲ごとにレッスンが用意されており、参加者は講師でレッスンを選ぶことも可能だが、自分が踊れるようになりたい楽曲のみのレッスンを受けることも可能になっている。さらに「NiD」では、グローバルアイドル専門育成クラスの「NiD Academy」も併設しており、グローバルアイドルを目指す候補生たちの教育をしている。ちなみに同アカデミーには早くも日韓中共同開催で話題のオーディション番組、グローバルガールズグループデビュープロジェクト「Girls Planet 999:少女祭典」へ4 人の合格者を出した実績がある。大手芸能事務所に所属する候補生が多くエントリーする中、最終選考の日本代表33 人に4人もの合格者を輩出した指導力には目を見張るものがある。運営陣に韓国大手事務所とのコラボオーディション開催経験があるなどKPOP 業界に明るく、KPOP オーディションに合格させるノウハウを持つのがその理由だという。
このことから同アカデミーには「En Dance Studio」からのアカデミー候補生の他、他校からもオーディション合格を目指し、転入してくる生徒も多くいるそうだ。筆者は韓国と日本のエンタメ業界に優劣をつけるつもりは毛頭ない。しかしいくつものKPOP グループが米国のビルボードランキングをはじめとしたグローバルランキングに欧米のアーティストと肩を並べてチャートインしていることは紛れもない事実だ。そういった意味で世界基準で勝負をできるアーティストの育成に定評のある「En DanceStudio」が輩出する人材に今後も注目したいと考えている。
聖地ブランディングという可能性
今回、同校を紹介したかった理由は観光とダンス業界のコラボに大きな可能性を感じたからだ。何かといえば“聖地巡礼”だ。
古くはビートルズのジョン・レノンが日本滞在時に利用した万平ホテルの128 号室が例にあげられるだろう。いまだに彼らが泊まったということで宿泊するお客さまがいるというからファンベースの力は本当に凄い。またサーフィンの世界大会で世界中のレジェンドサーファーたちが泊まることで有名な湘南のホテルもサーファーたちの聖地となっている。それであれば読者の施設に「En Dance Studio」を誘致してみるのも新たな魅力開発のひとつになるのではないだろうか? 2012 年の必修化に伴い、日本のダンス人口は右肩上がりに上っている。そこで親子旅の宿泊プランに有名ダンサーがプロデュースしたダンスアクティビティを取り入れてみるのも面白いかもしれない。
さらに彼らは世界レベルで評価される感性の持ち主たちである。コンセプトルームやアクティビティプラン、イベントやパーティなどコンテンツプロデュースでのコラボにも集客魅力に繋がる可能性が多くあるように思う。オリンピックが若者層を意識し新競技を複数導入したように、コロナ禍で停滞し、若者の旅行離れが進む観光業界も若い世代を魅了する今までにないコンテンツが求められている。そういった面からダンス業界とのコラボは若い世代の心を観光へと誘う大きな魅力になると考察する。
(取材・本誌 毛利愼 原稿 飯野耀子)
「NiD Academy」から「Girls Planet 999:少女祭典」日本代表33 名に勝ち残った比屋定和さん、山内若杏名さん、藤本彩花さん、桑原彩菜さん(画像左から)「オーディションを受験する際にそれぞれのスタイルや個性にあったエントリーダンスを選ぶようにアドバイスをしてもらえたり、応募写真を撮る際のアドバイスや書類選考の際のアピール法などをたくさんアドバイスして貰えたりするなど、合格につながるアドバイスがたくさんありました。またそういったサポート体制があることがとても心強かったですし、不安の払拭にもつながりました!(比屋定さん)」
「NiD」でのレッスン風景。この中から未来のグローバルスターが生まれる日も遠くないかもしれない
担当:毛利愼 mohri@ohtapub.co.jp