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第7回 C&RM ㈱ 小林 武嗣  供給過多時代を生き抜くためのレベニューマネジメント

第7回  リピーターというセグメントがないホテルのレベニューマネジメント

【月刊HOTERES 2019年08月号】
2019年08月09日(金)
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これは概念的なものではありません。実はNPS(ネットプロモータースコア)という方法で、アップルやザッポスといった米国の優良企業がこぞって採用し経営指標(KPI) の最重要数値としているものです。それはアンケートにたった一つの質問を掲載するだけです。
 
「あなたはこの製品を知人や家族にお勧めしますか?」
 
この質問に対する回答で「勧める」という人の率が高ければ高いほど、その企業の収益がアップするというのです。ところが前回も書きましたが、日本のホテル業においてはリピーターを軽視し、レベニューマネジメント一辺倒の運営をしてきました。そして、それは需要過多に沸いた2014 年から2017 年までに成功体験として刻まれたのです。
 
では、なぜ日本のホテル企業はダイナミックプライシングを主体としたレベニューマネジメントに傾倒したのでしょうか。一つは経営者の問題があります。
 
日本のホテルの経営者の多くはそのホテルの親会社から降りてくる方が多く、ホテルの現場を熟知しているとはいいがたいと言えます。
 
また、その任期も有限であることが多く、在任中に好成績をあげなければならない宿命があります。こうした中で長期的な成功よりも短期的な成功を重視してしまうのはしかたない面もあるでしょう。さらにホテル特有の問題もあります。
 
この図は一般的な業態と宿泊業が「リピーター重視施策」を行なった場合の違いを示しています。一般的な業態、例えば百貨店やファッション店の場合、リピーター施策を行ないそれがうまくいくと売り上げは伸びます。
 
ところが、ホテルを含む宿泊業の場合は、リピーターが増えても減っても”需要過多であれば” 売り上げは変わらない、もしくはリピーター施策による会員待遇などのコスト増によりむしろ収益は減少してしまうのです。
 
そして、2014 年から2017 年までの需要過多時代には「リピーターを増やしても意味がない」とホテル経営者は考えるようになってしまいしまた。ちょうどそのころ一部のホテルで「常識を超える」価格を提示して、大きな収益を上げた手法を「レベニューマネジメント時代の到来」と吹聴する人が増えていきました。
 
 これを「普遍的なもの」と考えてダイナミックプライシング型レベニューマネジメントに傾倒していくホテルが続出したのです。特に沖縄は2012 年から観光入込数が倍になっています。2015 年ごろに沖縄でリピーター施策をメインにしたセミナーを行なったとき、わざわざ筆者のところに「うちのホテルはリピーター施策なんかしない」と言いに来た人が何人かいたほどです。
 
しかし、現在沖縄では多くのホテルが建設され、数年後には供給がかなり増加する見込みです。果たして彼らのホテルがどうなっているのか、これからどうなるのかは注視していきたいと思います。

 
供給過剰時代に備えた
戦略転換を図る時期



供給過剰時代になると、図のとおり「一般的な業態」同様にリピーターの恩恵を受けるようになります。なぜなら、満室の壁が遠くなってしまうからです。
 
ところが、いまの状況はリピーターを軽視した運営になっているホテルがたくさんあります。リピーター率は10%前後というのも珍しくありません。ましてやリピーターに興味がなく数字すら分からないというホテルも多いでしょう。それでもホテルがもうかっていたからです。
 
しかし、そんな時代は長く続かないこともいまなら実感として分かるのではないでしょうか。現場のレベニューマネージャーは過去の成功体験から売り方を変えることはしないでしょう。それは彼らの経験を否定することになるからです。もし、レベニューマネージャーが筆者の記事を読めば「そんなことはない。自分のやり方が正しいのだ」と否定すると思います。ですから、彼らが自発的にそのやり方を変えることを期待するのは難しいことです。しかし、すでに京都や大阪などの関西圏ではダイナミックプライシングによる弊害がそこかしこに噴出しています。
 
いま、自信満々な関西圏のレベニューマネージャーは少ないと思います。でも、いまから「信用してくれるファンを増やそう」「リピーターを増やそう」と方針転換するのは勇気がいります。だからこそ、経営幹部やマネジメント側がやり方を変えるように誘導していかなければなりません。では、どのようにやり方を変えるべきなのか。それを次号以降で詳しく説明していきたいと思います。
 

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