レベニューマネージャーのみなさんは、宿泊需要が低くなると販売価格を下げて市場優位性を上げ、なんとか予約をとり稼働を確保しようとしていませんか。これまで常識だと考えられていた手法とは真逆の低稼働、高単価にこそ供給過剰時代を生き抜くヒントがあるかもしれません。
小林 武嗣( こばやし・たけし)
C&RM (株) 代表取締役社長
1968 年生まれ。東海大学文学部日本史学科卒業後、NEC ソフトに入社。大型汎用機を主体としたシティホテル向けPMS に携わる。96 年、NEC ソフト退社。現株式会社サイグナスを起業し、代表取締役に就任。2 年ほど製造業を主体とした開発に従事するが、97 年NEC と共同でNEHOPS-EEの開発を請け負い、日本初のパソコンシステムによる大型シティホテルの成功事例を作る。その後、NEHOPS-EE の開発センターとして全国のシティホテルに導入。2002 年、マイクロス・フィデリオジャパンとの協業を開始し、日本初のCRM システムをリリース。04 年、NEC ソフト時代の元上司の丸山に代表取締役を譲り、副社長に就任。その後、一貫してホテル業に対するCRM の普及をめざし活動。12 年には、CRM とRM の融合の実現を念頭にC&RM 株式会社を設立。
http://c-and-rm.com/
東京五輪後を見据えた
ホテル経営を
京都のホテル市場をモデルケースに供給過剰時代のレベニューマネジメントを考察していますが、ここ最近では大阪市場も悪化しているように見受けられます。
東京市場は東京2020 オリンピックに向けての準備需要が旺盛と見ており、これは2020 年3 月まではよいと予測しています。ただ東京市場も2020 年3 月に開業するホテルが多数あり、その後は一気に供給室数が増え、そのタイミングで準備もほぼ終わりとなっていますから流動的ではあります。
執筆時点(2019 年6 月13 日)の予測速報では、6 月は東京と名古屋が少し混んでいますが、それ以外の地域では弱含みとなっています。また、筆者がコンサルティングしているホテルでもこれまで9 カ月連続で予算達成してきましたが、6 月は黄色信号がともっている状態でホテルともども筆者も胃が痛い日々を送っています。
先日、産経新聞に「東京五輪後、9 都市で供給過剰に」という見出しの記事が出ていました。本誌も含めて多くのメディアが「供給過剰時代をどうするべきか」について本格的な論議に入っています。
こうした状況は、ホテル経営者側からすると歓迎すべきことではありませんが、いましっかり準備をしておくことは、今後の数年を占う意味でもとても重要になります。東京都五輪後も好調は続くという根拠のない楽観論に流されず、利益の出せるホテル経営を願っております。