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第12 回 小林 武嗣  経営者のためのレベニューマネジメント 

第12 回(最終回) 供給過多時代のレベニューマネジメントに備えよう

【月刊HOTERES 2018年11月号】
2018年11月23日(金)
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 これまで11 回にわたり、経営層/マネジメント層の方々に向けてレベニューマネジメントについて解説してきた。レベニューマネジメントは、高需要時には高利益をもたらしてくくれる一方、低需要期には企業を破綻させてしまうほどの打撃を与えかねないことを歴史が示唆している。2020 年の東京オリンピック・パラリンピック後に備えて、いま考えなければならないことについて考える。

小林 武嗣( こばやし・たけし)
C&RM ㈱ 代表取締役社長
1968 年生まれ。東海大学文学部日本史学科卒業後、NEC ソフトに入社。大型汎用機を主体としたシティホテル向けPMS に携わる。96 年、NEC ソフト退社。現株式会社サイグナスを起業し、代表取締役に就任。2 年ほど製造業を主体とした開発に従事するが、97 年NEC と共同でNEHOPS-EEの開発を請け負い、日本初のパソコンシステムによる大型シティホテルの成功事例を作る。その後、NEHOPS-EE の開発センターとして全国のシティホテルに導入。2002 年、マイクロス・フィデリオジャパンとの協業を開始し、日本初のCRM システムをリリース。04 年、NEC ソフト時代の元上司の丸山に代表取締役を譲り、副社長に就任。その後、一貫してホテル業に対するCRM の普及をめざし活動。12 年には、CRM とRM の融合の実現を念頭にC&RM 株式会社を設立。

レベニューマネジメントに翻弄された
米国の航空会社の轍を踏むな
 
 筆者は占い師ではないので未来のことは分りませんが、歴史から学ぶことはできると思っています。レベニューマネジメントに傾倒したホテル・旅館が今後どうなるかを歴史から考えてみましょう。下記の年表はレベニューマネジメントを最初に始めた米国の航空会社の歴史です。
 
 レベニューマネジメントの始祖と言われるアメリカン航空やその手法をまねた大手航空会社はこぞって1989 年に過去最高益を更新しています。この年は、まさにわが世の春ともいえるときで、この成功を見て米国のホテル業もレベニューマネジメントに傾倒していくわけです。ところが1992年に悲劇が訪れます。この年の赤字はレベニューマネジメントで得た収益ばかりではなく、過去にさかのぼって創業以来の収益を全部吐き出しても「なお足りない」という空前の赤字を計上しました。結果的には、この傷が癒えぬまま2001 年のアメリカ同時多発テロ事件の影響により客数減に耐えられずほとんどの大手航空会社は破綻しました。
 
 また、レベニューマネジメントの始祖であるアメリカン航空もリーマンショックを乗り越えられず破綻しました。この歴史を振り返って言えるのは、少なくとも1992 年の空前の大赤字は航空会社がレベニューマネジメントをやっていなければ起きなかったであろうということです。
 
 もし、航空会社がレベニューマネジメントをやっていなければ、赤字は赤字でもせいぜいCEO の馘が飛ぶくらいで、そこまでの痛手にはならなかったはずです。逆に1989 年の空前の高収益もレベニューマネジメントのおかけです。つまり、レベニューマネジメントは黒字も赤字も「大きく振れる」と言えるのではないでしょうか。
 
 高需要時ならば、高くしてもどんどん売れます。だから高収益になります。逆に低需要期ならライバルよりも安くしなくてはなりません。しかし、ライバルもレベニューマネジメントをしていますから値段を下げてきます。こうして価格競争が生まれたのは想像に難くないと思います。

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