お寿司だから日本酒、ではなくお寿司だから日高見なのです。日高見と言えば東日本大震災にて被災した蔵ですが、現在は震災前よりも設備投資をし、いきいきと精力的に造っているので、被災した蔵というネガティブな印象は全くありません。平井さんから「まだ言っているの?」なんて笑顔で言われそうです。震災から1 カ月後に平孝酒造さんに訪問した時のこと。石巻の荒れ果てた町を通りながら蔵の玄関前でドキドキしながら車を降りたとき、平井さんが笑顔で「誰かと思えば君たちか」と出てきてくれました。そして町や海沿いの光景を車で見せてくれて帰り際に、出荷されるはずだった日高見が津波をもろにかぶって瓶もラベルもグチャグチャになり、蔵の隅に山積みになっていました。魂込めて造ったお酒がとてもかわいそうだったので、無理を言って一本だけもらってきました。あの泥だらけの四合瓶はいつまでも風化させてはいけない証として残してあります。私の思い入れのある「日高見」ぜひ試してみてください。
第26回
浅井 剛一 GONZOの「日本酒SHOW」
第26回 寿司と日本酒
【月刊HOTERES 2019年04月号】
2019年04月12日(金)