MVB カップは総合力問われる“日本一決定戦”

 
　第二部のMVB カップはカクテルのみならず総合力を問うバーテンダー・コンペティション。25 歳以上のバーテンダーで、過去のPBO 主催コンペティションの受賞歴と同会による「プロフェッショナル・バーテンダー認定」を取得している者のみに出場資格がある。コンペティションではまず、酒類全般の知識や一般常識を問う内容50 問、100 点満点の筆記試験が行なわれる。ここで50点以下の者は0 ポイントとなる厳しいもので、創作や技術だけでは一番になれないという姿勢が表れている。続いて行なわれた創作カクテル部門は、カクテルの味覚やネーミング、色彩やデコレーションといった創造性のほか、普及性や将来性を問う商品企画と技術の審査だ。会場を埋める入場者が見守る中で、16 人のバーテンダーによる最高峰の試技が行なわれた。
 
　筆記試験と創作カクテルの合計得点の上位5 人がファイナルに進出する。今年のファイナルには、優勝した堀内氏のほかLE CHIC（東京・用賀）の篠田知宏氏、Bar 柿沼（東京・神楽坂）の柿沼辰弥氏、永楽倶楽部（東京・赤坂）の鈴木和行氏、BAR 髙橋（東京・西新井）髙橋芳明氏が選出された。ファイナルは壇上にカウンターを設置して、仮想のバー「BAR PBO」を舞台にして行なわれる。大会ごとにシーン設定は異なるが、今大会ではバー巡りを趣味とする男性が、日ごろのお礼に女性の上司を誘う食後のひと時としてバーを訪ねたという設定だ。

緊張のファイナルで問われるホスピタリティー

柿沼辰弥氏が総合2位。カクテルに関する豊かな知識と誠実な人柄が見られた

 
　昨年に続くファイナル進出の篠田氏は、この日のイベントに訪れた誰もが注目する中での緊張を感じさせないホスピタリティが表情にもあふれており、ファイナルの先頭を見事に務めた。柿沼氏は2016 年から4 年連続のファイナル進出。ゲスト役とのコミュニケーションからは、その実績にたがわぬ知識があふれ出ていたがいくらかの緊張が見えた。鈴木氏もファイナル出場ほかコンペティション優勝経験もある実力者。設定された店舗を自身の勤務先に見立て、その店舗のスタイルでカクテルを提供するなど会場を沸かせた。16 年のクリエイションカップ優勝者である髙橋氏もファイナルの5 人目として、今大会を締めるに十分なもてなしを見せたが、途中ゲストからの問いに対して答えに窮する場面が見られた。
 
　優勝した堀内氏は冒頭から笑顔あふれるプレゼンテーション。ゲストとのコミュニケーションからのカクテルの提案も的確で、結果に関して会場中が納得の表情を見せているのも印象的だった。何より、創作カクテル部門においてエントリーナンバー1 番で試技を行なう緊張や難しさ、そして試技終了からファイナルまで集中力を絶やさずに臨んだ姿もチャンピオンにふさわしい。
 
　ファイナル進出を逃した出場者も、過去のファイナル進出者やクリエイションカップほかコンペティションの優勝者、メーカー主催大会の常連など実力者が顔をそろえた。さらにこの大会・イベントの評価が高いのが、審査員の質とも言われている。バー業界の“ レジェンド”と呼ばれる重鎮や、近年のチャンピオンおよび実力者の顔ぶれは他協会・団体を凌りょうが駕すると言って良いだろう。そして出場者や会員店舗の顧客をはじめとした一般の来場者の多さと質も、ブース出展企業からも好評だ。
 
堀内氏は10 回目の挑戦でつかんだ栄冠。
「コンペティションに取り組み始めたのは、MVB カップの前身の大会がきっかけです。その素晴らしい大会で優勝させていただけたことに感謝します。MVBといえどもまだまだ成長しなければならないと思います。これからも日々の営業に真摯に取り組んでいきます」と優勝の喜びとともに、チャンピオンとしての今後に目を向けた。