優勝した岡沼氏は2008 年のフレア・バーテンダー全国大会の優勝者でもある。フレアとクリエイティブの両方で世界大会に出場する、世界でも稀有な存在だ
ファイナリストそれぞれの 魅力あふれるカクテルとプレゼンテーション
バカルディ ジャパン㈱(東京・恵比寿、前田章子社長)が輸入しサッポロビール㈱(東京・恵比寿、髙島英也社長) が販売するラムによる「Bacardi Legacy Cocktail Competition 2019」(BLCC)の日本大会ファイナルが2 月21 日に恵比寿アクトスクエアで行なわれ、SHADOW BAR(青森・八戸)の岡沼弘泰氏が優勝した。
BLCC とは世界の主要な国や地域で予選が行われる、最大規模のメーカー主催カクテルコンペティションの一つ。2008 年に第一回大会が始まり、2016年からは日本でも予選が行われている。12年大会では米国代表として出場した日本人バーテンダーの後閑信吾氏が世界一の称号を得たことでも知られており、業界における注目度も高い。今年の日本大会も11月21日に行なわれたセミファイナルで、書類審査を通過した20 人から5 人のファイナル進出者が決定していた。
いずれのファイナリストも質の高い試技を見せた。高宮裕輔氏(TIGRATO、東京・四谷)は心からあふれ出る思いそのままのプレゼンテーション。自身の店舗の存在意義や“ 可能性” を意味するカクテル「Possibilità(ポッシビリタ)」の創作意図を、言葉を飾ることなくストレートに発したのが印象的だった。バカルディ8にグラッパ、アマレット、アマーロなどイタリアの素材を用いて創られたカクテルは、力強さが感じられる食後酒向きの一杯だ。続く西野真司氏(Woodberry Coffee Roasters、東京)のカクテルは世界共通で存在し、日本人にとってなじみのある水割りのインスピレーションも用いた「LOGOS(ロゴス)」。途中で言葉に詰まるところもあったが、その実力は2年連続のファイナル進出という結果が表わしていた。佐藤麻美さん(PullmanTokyo Tamachi、東京・田町)は、明るさと華を感じさせる英語によるプレゼンテーション。祈りを込めながら乾杯をする習慣を次世代の乾杯カクテルとして「oración(オラシオン)」に込めた。水岸直也氏(TRUNK、東京・渋谷) もコンペティション常連らしいステージ上での存在感を見せた。アーネスト・ヘミングウェイの小説『老人と海』をベースにした新しい「パパ・ダイキリ」(ヘミングウェイ・ダイキリ)という作品「PARTIR(パルティール)」の創作の意図も明快な作品だった。