日本酒造組合中央会認証「日本酒スタイリスト」として精力的に活動を続けるタレントの島田律子氏が、日本の伝統文化、日本酒の魅力を深く伝えることで、海外からのお客さまをおもてなしするホテル、レストランの力を向上させるためのヒントをお届けしていく本連載。今回は「白鹿」の蔵元である辰馬本家酒造株式会社の辰馬健仁氏、グループ会社として設立された株式会社六自の中野佳子氏にご登場いただいた。酒樽職人の初代辰屋吉左衛門が1662(寛文2)年に酒造りを始めたことが、辰馬本家酒造の起源。イノベーションに取り組む精神は現在の辰馬本家酒造にも受け継がれ、新たな日本酒マーケットの創造に挑む姿勢は業界内外から高く評価されている。オータパブリケイションズ代表取締役の太田進を交えた2回連続座談会の第2回をお伝えする。
辰馬健仁(たつうま・けんじ)(写真中央)
兵庫県西宮市出身。甲南大学法学部法学科卒業後、三和銀行(現三菱UFJ 銀行)入行。1999 年家業である辰馬本家酒造㈱入社。2001 年取締役、02 年常務取締役、04 年取締役副社長。06 年代表取締役社長に就任。
企業理念「育てる」のもと、「育てあう」を白鹿グループで実践。「米を笑いに!」をビジョンにお客様を笑顔にする酒蔵を目指して、型にとらわれることなく挑戦し続けている。㈱六自 代表取締役会。現在に至る。
中野 佳子(なかの・けいこ)(写真右)
1992 年 辰馬本家酒造㈱に入社。営業職として組織小売業を担当。自社商品を売ることだけでなく、お客様がワクワクできる買い場創りもサポート。2012 年よりブランドマネジメント販売戦略室マネージャーとしてブランド戦略、マーケティング戦略を担当。直販事業部部長をへて2017 年、コミュニケーションデザイン部を立ち上げ、日本酒の新しいシーン創りだす「ソトノミプロジェクト」をスタート。2018年5 月辰馬本家酒造㈱の新会社としてSAKE のコミュニケーション&エンタテインメントの創造を目的に株式会社六自を設立 代表取締役社長に就任。
島田 律子(しまだ・りつこ)(写真左)
スマイルブリュー カンパニー代表・タレント・日本酒スタイリスト(日本酒造組合中央会認証) 日本酒の魅力を伝える講演・イベントの司会や出演など、年間100 本以上をこなす。TV出演や雑誌などへの執筆も多く、そのエンターテイメント性の高さと分かりやすさから、ファンやリピーターが多い。飲食店や百貨店の売り場プロデュースの依頼も多く、NAGAE +『TRAVEL CHOCO』など酒器を始めとした商品開発や、女性ならではの視点から日本酒の美容・健康効果に着目。日本酒美容を取り入れた日本酒美容コスメ『MAIDEALE』をプロデュース。HP:http://www.smile-brew.com/
屋外で日本酒を楽しむ江戸文化にヒント。
グランピングに置き換えて発想してみた
島田 中野さんが代表取締役社長を務める辰馬本家酒造のグループ会社、六自が販売するSAKE リキュール「muni(ミュニ)」は、マーケットに対してまったく新しいアプローチをしています。
辰馬 江戸時代の屏風絵にも残っているように、日本人は古くから屋外でさまざまなことを楽しんでいて、その風景に日本酒も描かれています。昔はぜいたくに日本酒を屋外で楽しんでいた日本人が、今は楽しむことをしなくなってしまったのはおかしい。その楽しみ方を今の時代に重ねるために、グランピングの空間に日本酒を入れてみたらどうだろうかと考えました。
「グランピングと言えばイビサ島だ」ということで、スペインのイビサ島に行ってみました。イビサ島では「白鹿」が売られているのでレストランで注文してみると、「ストレートか、カクテルか」と聞かれました。どんなものが出てくるのかと両方オーダーしました。するとストレートはショットグラスに少しだけ入っていて、「なるほど、こちらの人たちはこのスタイルで日本酒を楽しんでいるのか」と思いました。
カクテルはブラジルにカイピリーニャの日本酒版として「サケピリーニャ」というカクテルがありますが、そんな感じでした。果物をつぶして、そこに砂糖とクラッシュアイス、そして日本酒を入れるのです。