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第50回 “風の人”山下裕乃の「THE SHARE」 

第50回  多様化する快適に過ごせる居心地ニーズ ~自分が決めた空間を阻害されることを敬遠する消費者たち~

【月刊HOTERES 2018年11月号】
2018年11月02日(金)
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 化粧室に行きたくてもスムーズに行動できません。寝ている人を起こしてはいけないと思いながら、組まれている足元を飛び越えていきます。テーブルが飛び出していたときには、結局、寝ている人を起こさなくてはなりません。ご自身は通路側で簡単に出入りできますが奥に座っている人のことを考えて配慮してほしいところです。しかし、それぞれの居心地を考えれば、その人にとってはそこが最高の居心地であり、新幹線の中で日ごろの疲れをいやすための睡眠の没頭するのも楽しみであり、居心地かもしれません。
 
 最近は新幹線の指定席はとらずに自由席を選択する女性も増えているようです。それは自分の空間にそぐわない人が隣に座ることを苦痛と考えているからです。自由席であれば席が開いている限り、自分が好きな席を選べます。もし仮に隣に自分の居心地を阻害する人が座ったら場所の移動も自由にできます。同じシートに並ぶ人を自由に選択することができる方が快適な新幹線ライフを楽しめるからということです。
 
 飲食店も然りです。例えばランチのときにいつも座っている席にほかの人が座っていたら、違和感を抱きながら別の席で食べます。どことなく座り心地が悪く、楽しみにしていたランチタイムのひとときが半減することもあるでしょう。自分に決められた指定席は実際はないのですが、自分で勝手に決めている自分の席という感覚がそのような感情を起こしてしまうのだと思います。職場においても日ごろ慣れた席から移動したり、部署異動でちがうメンバーとともに仕事をしなければならないとき、多くの人は何となく居心地の悪さを感じるのではないのでしょうか。
 
 もちろん、職場においては居心地が悪いから辞めます、というわけにはいきませんが、日常生活においては居心地が悪ければほかの場所を求めることができます。自分の空間や感覚を阻害しない、同調した雰囲気を感じさせる場所を求めます。ホテルも然りです。どんなにブランドや歴史があったとしても、居心地が悪ければほかのホテルを探します。いつも快く受け入れてくれた支配人が異動したり、ほかのホテルに転職して不在になったとき、居心地が良かったホテルが急に居心地の悪いホテルに転落します。ほかの人は素晴らしくてもたった出会った1 人の対応が悪かったとき居心地感は変わります。ホテル側からすればとてもわがままな行動心理かもしれませんが、自分の居場所は個の時代になるほど重要です。
 
 万人に居心地の良いホテルを作り上げていくことはとても難しいことです。そういった意味では最近の個性的なホテルは多様化する居心地ニーズをとらえています。個性があるからこそ、自身のキャラクターや求めているものにフィットするホテルを探すことができるからです。何でも誰でもOK、いらっしゃいませ~では多様化する居心地ニーズになかなか対応しきれません。しかしながら、常連客が離れたときスタッフを見渡してみてください。居心地を阻害している原因が見つかるはずです。まさか部長、新幹線通路席で居心地を阻害していませんよね。

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