年間4000 万人の訪日外国人誘致を目指している日本政府。実績は着実に伸ばしているものの、さまざまな課題に直面している。その中でいち早く観光庁が有識者たちを集めた観光産業革新検討会の座長として、またMICE 国際競争力強化にも尽力しているのが大妻女子大学特任教授 玉井和博氏だ。1993 年ホテル業界に一歩踏み込んで以来、表裏ともに360 度の視野でさまざまな改革に挑んできた。観光のグローバル化問題含め、さまざまなお話をお伺いした。
大妻女子大学
教授
玉井 和博氏
〈プロフィール〉1949(昭和24)年生まれ。長野県安曇野市出身。71(昭和46)年立教大学経済学部卒業後、京急不動産㈱入社。2001(平成13)年ホテル グランパシフィック メリディアン取締役副総支配人兼営業統括部長に就任。05(平成17)年㈱桜蘭代表取締役社長(ホテル パシフィック東京取締役副総支配人兼職)に就任。07(平成19)年ホテル パシフィック東京常務取締役総支配人、08(平成20)年㈱ホテル京急代表取締役社長兼ホテル パシフィック東京総支配人に就任。10(平成22)年立教大学観光学部特任教授、16(平成28)年大妻女子大学教授(2017年同、人間関係学部特任教授)に就任、現在に至る。観光庁「観光産業革新検討会」座長、観光庁「MICE国際競争力強化委員会」委員、東京都「観光有識者会議」委員など、主に観光に関わる外部委員にも携わる。
▶観光産業の革新と国際競争力の向上を目指し設置された「観光産業革新検討会(観光庁)」の座長を務められるなど、ホテル経営の実績を背景にホスピタリティビジネスの発展に寄与されていらっしゃいます。宿泊特化型を主軸としたホテル計画や空き家対策としての投資型の民泊など、訪日外国人数が着実に伸びている中で東京五輪開催も視野に宿泊業そのものは活性化しています。民泊の合法化など、利用者側にとっては目的に応じた選択肢が増えている一方で、宿泊業という枠の中では競争激化を危惧する声が高まっています。
政府が目標と定めた、訪日外国人観光客数2020 年4000万人の達成に向けては、現存のホテル数では不足しているため、宿泊施設の増強に向け旅館業法改正や、住宅宿泊事業法により民泊に対する門戸が開かれたことは周知の事実です。宿泊以外のサービスも伴うホテルや旅館にとっては民泊を果たして同等の宿泊施設として良いのか、という声も上がっています。ご承知のとおり民泊といっても「ホームステイ型」そして空き家対策も含めた「家主不在型(投資型)」とがあります。いずれにしても今後、空き家問題を抱えている地方都市、市区町村などは、民泊を観光振興や交流人口増加のきっかけになればと検討しているところが増えています。観光立国を目指す中では、民泊の是非云々ではなくそれぞれの地域社会において、多岐にわたるマーケットの要求に応えるためにも、さまざまな業態の宿泊施設が“混在し共存する!”ことが大切になります。その中で地域の伝統・文化だけでなく新たな事業創造も地域一体となり取り組んでいくことが出来るかが課題です。