福永 「200 年継続するすごい会社」とはどのような会社なのですか。
杉元 世紀を超えて、存在そのものに大きな意義があり、社会に必要とされて、世の中に影響を与える会社を指します。昨年20 周年という節目を迎え、掲げた新・中期3 カ年計画のスローガンは“世界で一番「ありがとう!」を「言う」会社へ”です。感動を創造、提供し続けていくためには、まずは自分たちが「ありがたい!」という気持ちを、しっかりと言葉に出せるような会社や組織や人でありたいという願いからスローガンを掲げています。
昨年10 月に東京・品川に次ぐ「ランドマークスクエア」ブランドの第2 号「ザ ランドマークスクエア オオサカ」を開業しました。10 数年にも渡り眠り続けていた大阪城脇にたたずむ歴史的建造物をリノベーションし、行政と組んで大阪城公園エリアの活性化を目指しています。
福永 明確なビジョンと中期計画を掲げていらっしゃいます。掲げた方向に向かって全社一丸になることは、それぞれの個性や経験値が異なるなかで、簡単なことではないでしょうね。
杉元 ビジョン達成に向けた中期計画推進の原動力となるのは「理念」「文化」「人財像(*PDP では人材を財産と捉え「人財」としています)」です。それがPDPらしさの最大の資産であり、それを再確認、進化させ中期計画の推進力を担保します。これまでを振り返ると、12~ 14 期中期計画は「身長伸ばさず筋トレしまくる」、15 ~ 17 期中期計画は「筋トレしつつ身長伸ばす」、18 ~ 20 期中期計画は「質と格を上げる」です。計画を明確にすることで即戦力を求めて中途採用に絞り込んだり、新卒採用に取り組んだり、企業がさらに成長していく過程でスペシャリストの採用や幹部、マネージャークラスとなりうるゼネラリストの採用など、採用においてもコントロールして行なってきました。また出店計画についても社内強化を図るべきときは、身長を伸ばさず、筋トレを繰り返し行うことで内部強化を図っていきました。その後、改めて次なる挑戦に向け両輪で動かすなど、市況や社内状況を見据えコントロールすることが、経営陣の役目であるという考えです。とかく先に先に走りがちですが、経営者が走っても追随するものがいなければ経営は成り立ちません。またメンバーの満足度を高め、働く意欲を高めていくためのキャリアップの仕組み作りもかかせません。
福永 ウエディング、ホテル業界ともに労働力に対する対価や評価が、まだまだ明確ではないところがあります。上司や社長の感覚値などで人事評価してしまうこともあると聞きます。自身のキャリアパスの仕組みが明確で適正に評価され、自身の才能が生かせる職場であることが、何より満足度を高めることに繋がるのではないでしょうか。
杉元 社会人の中での自分たちの位置づけの明確化も必要です。自分が社会人としてどのポジションにいるのか、またどうしていきたいのかなど、将来図を描きながら前進していくことです。PDPではポジションに応じたビジネスカレッジも行っており、マネジメントカレッジは1年間で6回行ない、リーダーシップや経営戦略などを学んでいます。私自身、経営学を体系的に学ぶために、2012 年グロービス経営大学院を修了(MBA 取得)しました。社会の中で俯瞰的にPDP を見るという視点を持つことができ、課題を見出す機会にもつながりました。また、旧・中期計画振り返りとして「感動の技術」を優位性として開発・強化してきた方針は今後も変わりませんが、感動創出手前の基本的な部分に課題がありました。土台(本質機能)は「お客さまに喜んでほしいと思う心、基本的スキル、サービス」、ピラミッドの頂点部分を技術(表層機能)は「感動の技術」という構図で、スキルを高めるためのテクニカルカレッジもスタートさせました。さらに、組織をより強固にするためPDPとして求める人財像を再定義しました。
福永 どのような見直しをされたのですか。
杉元 これまで明文化していた人財像は「PDP WAY の考え方に共感し、体現している人」「PDP を成長させる意欲を持ち、PDPと共に成長していける人」「自らが考える姿勢と、考える力を持っている人」「業務に必要な専門性・技術力を持つ人」です。一部変更したことは「会社の期待に応じて勤務地や職種・勤務条件などを変更できる人」です。新たに追加した項目は「自分がされて嬉しい事をする人」、「ダサいことが大嫌いな人」です。
福永 モノではくココロを販売しているサービス業にとって、センス良く創造する価値観はとても大切なことですね。
杉元 それ以前に大切なこと、まさに「仁・義・礼・智・信」です。お客さまはもちろんのこと、社内のスタッフ間でも仁義を重んじ接すること、そしてありがとうと言える心を持つことは大切なことです。PDPでは360 度評価を行ったり、年14 回最大20 名のメンバーと私が飲む機会を設定し、コミュニケーションを図り、常に経営者とメンバーの距離感を縮めるよう努めています。これからも計画や目標を明確にし、求める人財像を見直しながら、200 年継続できる企業を目指していきます。
福永 杉元社長の緻密でありながらも、スタッフとのコミュニケーションを大切にされ、感動を提供する企業として仕組みを作り上げていらっしゃいます。今後もさまざまな開発やコンサルタント事業など、日本のサービス業を更に元気にさせる企業としてのご発展をお祈りしています。本日はありがとうございました。
㈱ポジティブドリームパーソンズ
代表取締役社長
杉元 崇将 氏
1997 年㈱ポジティブドリームパーソンズ設立。ウエディングプロデュースやゲストハウスの企画運営に始まり、その後ホテル施設の運営受託や複合施設の企画開発に多数参画。ウエディングからスタートし、現在ではホテル・レストラン・フラワー・バンケット・コンサルティングなど6 つの領域へ事業を拡大。「感動で満ちあふれる日本を創ってゆく。」をコーポレートビジョンに掲げ、日本のモノ創りではないコト創りの強みを再編集した、日本№ 1 の感動創出企業の実現を目指す。2012 年グロービス経営大学院修了(MBA 取得)。2013 年第13回EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー セミファイナリスト選出。2016 年度世界最大級企業家グループのEO TOKYO 会長に就任ほか。
㈱フェイス
代表取締役
福永 有利子 氏
レストラン・ゲストハウスのウエディングプランナーから各現場の管理職としてマネジメントを担い、確実に業績を伸ばしてきた。2003年にウエディングプランナー養成スクール講師を始め、2006年から2015年まで大学にて非常勤講師として教壇に立つ。2006年堂島ホテル婚礼部長、2008年同ホテル副総支配人。2009年に㈱フェイスを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。現在は、全国のホテルやゲストハウスにて成約率向上を目的としたトレーニングや、集客戦略立案・実践支援などのコンサルティングに加え、会場のビジュアル改善や各種販促ツールの制作など、ウエディング事業の収益改善に向けた業務支援を幅広く行なっている。また、現役ウエディングプランナーの人材育成や専門学校生やウエディング業界への転職希望者などを対象としたスクールも開講。今後は、ウエディング業界を超えて、ホテル・ホスピタリティ業界にて、人材育成マネジメントを広く担っていく。2018年4月から神戸国際大学客員教授。著書 : 『ウエディングプランナーじゃない、アカンのは上司や! 悩める管理職のアメムチ19の育成術』