▶ 180 度ガラリと転身しましたね。
ワインの知識を習得し、サービスの本場(私見です)での見聞も必要と考え、在職中に自費でフランスに赴き、ワイナリーで収穫のお手伝いをしたり、地場のレストランで地のサービスを受けるなど、自己研鑽、情報収集を行ないました。学ぶほどに奥深さを知り、サービス業の難しさ、楽しさをお客さまとの接客を通じて実感しました。レストランへ来られる方はそれぞれに目的が異なります。お誕生日のお祝いであったり、接待であったり、また客さまは千差万別ですので、個性も異なります。1 つとして同じ接客で済まされることがなく、お客さまの反応をみながら、いつ、どのタイミングで声を掛けたらよいのか、どこまで踏み込んで良いのかなど、リズムとタイミングが大事です。あるお客さまお席に座られ始めに“お水をくれる?”とおっしゃったので、この方はワインなどお酒は嗜まないのかなと思ってお勧めしないままにいたら、実はそうではなくてワインが大好きでソムリエからの提案を待っていたというのです。このときに初動で勝手な判断をしてはいけないことを学びました。いかに内にある思いを会話の中から引き出していくことができるかも、サービスに携わる者にとってとても大切なことだったのです。
▶特に日本人はシャイな方が多いので、なかなか自分から切り出せない傾向にあります。表情やちょっとした仕草から感じ取り、さりげなく声を掛けたりサービスを提供しなければなりません。五感を張りめぐらしていなければなりませんね。
ちょうど、レストランに入るまでの間の2メートルほどがフローリングになっており、そのときの聞こえるクツの音や歩くリズムで、お顔を拝見しなくても“だいたいの年齢やイメージをつかむことができます”と想像がつきます。イメージした人物像はほぼ思った通りの方です。事前にキャッチすることで、お客さまと顔を合わせたときに、どのような対応をするべきか、どのような声をかけたらスッと会話ができるかなど、準備することができます。食を通して楽しく、ハッピーな時間を過ごしていただくことが、料飲サービスの使命です。通り一遍ではなく、お客さまに見合ったものをさまざまな引出しから取り出し、提案をして差し上げ、そして提案に対してご満足いただくことです。ご満足いただいた方からご指名でテーブルに呼ばれることもあります。とてもうれしいことであり、もっともっと楽しんでいただきたいという気持ちになりますね。