西を代表する有馬温泉。歴史は600 年代にさかのぼり、1191 年奈良の僧侶仁西（にんさい）により再建され、温泉と12 の宿坊が建った。有馬温泉郷の宿に「坊」が残されていることからも歴史がうかがえる。その後も困難を乗り越え1400 年の歳月を経て、今では「金泉」「銀泉」を堪能できる日本の三名泉の1 つとして地位を確立し、多くの観光客でにぎわっている。12 宿坊の「中の坊」の名を継承し、長い歴史を持つ㈱中の坊 梶木実社長に伝統の継承と次世代に向けた改革における人材育成についてお聞きした。
福永 有馬温泉は神戸から車で30 分ほどの位置にある風光明媚な温泉郷として、全国各地から多くの観光客が訪れています。その中で長い歴史を持ちながらも、常に新たな挑戦をされている梶木社長に、人材育成や今後の取り組みについてお聞きしたいと思います。旅館は人材不足が厳しい状況にあると伺いましたが、いかがでしょうか。
梶木 有馬温泉の知名度から以前は新卒者も多く採用できたのですが、会社説明会を実施しても参加者が年々、減少しています。現状を打破するために有馬温泉というよりも旅館業界をもっと知っていただくための活動を開始しました。具体的には専門学校や大学に足を運び、旅館の女将が旅館で働くことの魅力や奥深さを伝え、旅館業へ関心を持っていただくよう努めています。自社では年齢が近い先輩社員が働いている姿や声をWebに掲載するとともに、会社説明会の回数も増やしています。まずは旅館というものを知っていただくこと、お客さまとの距離が近いからこそ、お客さまに学びを得ながら人間として一回りも二回りも成長できること、そして成長していく自分自身に喜びやかがやきを感じていただけると思います。単にお部屋にお料理を運ぶだけの存在ではないことをご理解いただきたいと思っています。
福永 最近はお部屋出しを止め、ブッフェや館内の食事処を食事の場所として提供する旅館も増えているようです。旅館側のお客さまにご満足いただき、また足を運んでいただけたときの喜びは大きなものとなります。ある一定の距離を保ちながらも親しくなることで、お客さま人材不足ということもあるのかもしれませんが、お客さま側も部屋出しを敬遠される方も増えつつあり、今の時代のニーズに合ったスタイルに変化しているのでしょうか。
