公益社団法人 国際観光施設協会 技術委員会 旅館観光地分科会 松本 衛
ナブコシステム㈱ 営業統括部 開発営業部 副参事
ナブテスコ㈱ 住環境カンパニー 技術部
技師 角山浩司
※本稿執筆者
自動ドアはお身体の不自由な方や子どもから高齢者まで幅広い方々に利用され、日々の生活に密着した、社会的に不可欠なものとして、その重要性が認識されています。ホテル・レストランなどのエントランスにおいても、お客さまをお迎えする顔として広くご採用いただいていることと思います。日頃意識して通ることは少ないと思いますが、自動ドアも着実に進化を続けており、今回はその安全性を中心に最新の動向についてご紹介します。
自動ドアの安全基準
当社も加盟する業界団体である全国自動ドア協会(JADA)が原案を作成した、日本工業規格『JIS A 4722歩行者用自動ドアセット-安全性』が2017 年3 月に制定されました。自動ドアの種類は多様であり、JIS A4722 ではそのすべてを対象としていますが、今回は設置台数の大部分を占め、皆さまにも馴染み深い引き戸を対象としてご説明します。
事故の事例と対策
重大事故はほとんど発生していないものの、高齢者や小さな子どもが多く、代表的な事例として次のようなものがあります(図1)。
①自動ドアの開口部近傍での『立ち止まり』に起因する、閉じてくるドアによる接触・挟まれなど
②自動ドアの開き側での、開いてくるドアによる接触・挟まれ、指の引込みなど
これまでもJADA 独自の安全ガイドラインにより、開・閉速度の制限やセンサ検知範囲の確保などの対策を行ってきましたが、JIS A 4722 ではさらなる安全性の向上を目指し、基準を強化しています。具体的には上記の事例に対しては、次のような対策が盛り込まれています。
①自動ドアの開口部近傍のセンサ検知については、検知範囲内で静止した人や物をより長時間(30 秒以上)検知すること、故障検出のための定期的な診断(1 開閉ごと)を行なうことなど
②自動ドアの開き側については、ガードスクリーンや防護柵の設置または安全な距離を確保すること、警告表示(接触禁止)を行なうことなど