飲食店に特化してお金に関するコンサルティングを提供する株式会社ビーワンフードの代表取締役を務める公認会計士/税理士の廣瀬好伸氏が、お金にまつわるケーススタディーを語ることで、飲食店経営における問題点と解決の糸口を探っていく。連載第1 回は、ワインの魅力をカジュアルに伝える「VINOSITY(ヴィノシティ)」、ファインダイニング「cena culum(チェナクルーム)」など多店舗展開するほか、ワインスクール、ワインショップも多角的に経営する株式会社シャルパンテ代表取締役、藤森真氏をお迎えした。
飲食業はヒト・モノ・カネが必要な
複雑性の高いビジネスである
廣瀬 藤森さんとは2015 年に開催されたセミナーで、はじめてお目にかかったのでしたね。
藤森 私が一部の講師、廣瀬さんが二部の講師を務めて、飲食店の財務について実例と理論の両面から講義するという内容でした。自分の講義が終わって廣瀬さんの講義を聴いた瞬間、「廣瀬さんにお願いしよう」と決断していました。
一般的な税理士はこちらがやってもらいたいことを忠実にやってくれるのですが、プラスアルファの専門的なアドバイスはもらえないという印象があります。でも廣瀬さんであれば、プロの会計士、税理士としての視点から、飲食店経営に関する的確なアドバイスがいただけると直感できたのです。
廣瀬 ビーワンフードは一言で言えば「飲食店に特化した会計士、税理士の会社」です。ヒト・モノ・カネの中でカネに関する部分を中心に、飲食店の皆さまをサポートさせていただいています。ただ、例えば家族で商売をされていて「この一軒のお店さえ守っていければいい」という方は、基本的に私たちのところにはいらっしゃいません。私たちの最も多いクライアント層は5 店舗から20 店舗を経営されている、あるいはそこを目標としている方々です。
ビーワンフード設立前、私たちは飲食店を立ち上げて実際に経営してみました。口先だけのコンサルティングになってしまうのを避けるためです。ところがなかなかうまくいかず、結局6 カ月でお店を閉めることになってしまいました。少し痛い目にあって、ややテンションも下がってしまったのですが、その後再び熱を入れて飲食店に特化した事業を本格的に始めることになり、2010 年にビーワンフードを設立しました。
藤森 自ら飲食店を経営してみて、どのような感想を持たれましたか。
廣瀬 「大変なビジネスだな」というのが率直な感想です。机上の空論だけを語る評論家にはなりたくなくて実務を体験してみたわけですが、一から飲食店を立ち上げてそれを続けていくのは本当に大変だということがよく分かりました。
大変である理由は、飲食業はヒト・モノ・カネのすべてが必要な複雑性が高いビジネスであるところにあります。実際には複雑であるにもかかわらず、そこまで複雑だと思っている方が少ないということは、逆に言えば私たちがサポートできるポイントがたくさんあるということです。