大住 力(おおすみ・りき)
ソコリキ教育研究所 所長
公益社団法人「難病の子どもとその家族へ夢を」代表
東京ディズニーランドなどを管理・運営する㈱オリエンタルランドで約20 年間、人材教育やプロジェクトの立ち上げ、運営、マネジメントに携わる。退社後、「ソコリキ教育研究所」(研修・講演・コンサルティング)を設立し、前職での経験を生かして、人材育成プログラムを企業などに展開している
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■ Case Study 16
「組織および個人のバリュー・イノベーション〈変革〉の手法」
「変革」って、言うけれど企業や組織は、個々で“ 成長”、“ 発展”、“ 変革” しなくては…と簡単に言いますが、そんなに簡単にできるものではない、とお悩みのリーダーも多いはず。一体、具体的にはどのように変革すれば良いのだろうか? という問いに対しての一つの手法を、今回は提示してみたいと思います。そしてまた、それは企業全体や組織の変革についてと、それを実際に行う一人一人のスタッフに向けての手法を、説明したいと思います。
以前、中堅の企業の「組織活性」を目的にした総合的なコンサルティングを行なったことがありました。社員数が100 名弱の組織で、営業担当が受注してきた業務を、現場の運営担当者が出向き、作業を行うという形態の事業でした。組織的には、総務と呼ばれる事務経理部門もあり10 数名の事務部門のスタッフが朝は8 時から出勤し、夜は20 時くらいまで実際は連日勤務をしているという、オーバーワークぎみの運営でした。
私が初めてその企業に出向いて驚いたことは、創始者である現在の会長兼社長と話しを進めている途中から、ひっきりなしに携帯電話が鳴り続け、その対応に追われる会長の姿でした。電話中の会長の会話を少しだけ聴かせていただくと、どうやらそれはスタッフから会長に向けての“ 決裁・判断の指示” の確認の電話であって、会長もその事実確認に電話口で確かめながら、一つ一つ対応していた。どうやらその内容を聴いていても、事務所の書棚などの備品発注に関する細部のことにまで及び、それが連日、何十件におよぶ判断を迫られるので、会長も本当にまさに“ 多忙” を極める状況でした。また、一方、各スタッフも、会長に一つ一つ確認を採らなくてはならないので、会長が電話に出て、即時判断してもらうまでは、その運営が仮に途中であっても、判断を得るまでは、中断せざるを得ないという、実に非効率的な現場でありました。そしてまた、業績も好調であったために、新旧スタッフの出入りが激しく、その度毎に、新人教育も必要で、現場はかなり混乱を極めている状況でした。