さらに良いサービスを目指し、振り返ることも忘れず
コンシェルジュのほとんどが、一人でゲストに向き合う。だからこそ、そのパーフォーマンスはコンシェルジュの基礎となる高い知識とともに自制心が必要だ。自らが甘えにおぼれず、常に細やかな心遣いを忘れてはならない。コンシェルジュチームでは、毎回のゲストとのストーリーを交換し合う。これは自身が不在の際でも、そのゲストのことを知り、コンシェルジュチームとしてのサービスの連携をするためだ。加えて意見を交換しながら自らのゲストへの対応を冷静に振り返り、学ぶことが、さらに次の“より良いもの”を目指す糧となる。
前述のご夫婦を案内した際も、仲間からは大丈夫かという声も出た。“楽しめるだろうか?”という不安が一瞬よぎったが、私自身も2 回ほど行った経験あるルートだ。迷わないように情報の準備もしたし、迷った際、日本人に道案内を頼むカードも用意した。時間の余裕を持ち、帰りの電車の時間も決めた。ご夫婦は軽快な行動派。大丈夫と思い直す一方、標識は少なく英語が通じる人も少ない。何かあったらお客さまに不快感を与えるばかりか、不本意な出費も与えかねない。同行したい気持ちになり、やきもき。心配は尽きない。
翌々日、お二人がデスクまで一目散に駆けていらっしゃった。“昨日は楽しかったわ~!”。この一言で、私たちは報われる。ご主人が新幹線を堪能し広島駅に到着後、すぐに宮島に向かい、一瞬の土砂降りの雨の中でも厳島神社を堪能。残りの時間を広島平和公園内で過ごしたとのこと。世界遺産、厳島神社の美しさにずぶ濡れの思い出は一生忘れないと笑って話す奥様。新幹線で富士山側の席を手配したが、広島の降水率20%の天気予報を見て、傘を持参するようにアドバイスするのを忘れた。次回は完璧に。
第18 回
Golden Keys 黄金の鍵 ~ Hospitality の世界から~
第18 回 ゲストの心の声を聴きながら、勇気をもってより良い提案を
【月刊HOTERES 2016年09月号】
2016年09月30日(金)