東出 江津子
(ひがしで・えつこ)
Etsuko Higashide
〈プロフィール〉ザ・キャピトルホテル東急 エグゼクティブコンシェルジュ。レ・クレドール ジャパン 前会長。明治大学卒業後、センチュリーハイアットリージェンシーに入社。宿泊部業務全般とアシスタントマネージャー業務を経験後、本格的にコンシェルジュとしてスタート。その後、メリディアングランパシフィック、フォーシーズンズホテル丸の内東京、ホテルニューグランドでシェフ(チーフ)コンシェルジュ(管理職)の経験を重ね、2015 年7 月よりザ・キャピトルホテル東急に移り、現職に。1990 年、レ・クレドール インターナショナルより指導を受け、レ・クレドール ジャパンの創設のための勉強会を東京で主催。1992年よりレ・クレドール会員。
コンシェルジュのデスクの配置
当ホテルのコンシェルジュデスクは、フロント脇の一番奥にある。欧米のホテルと異なり多くの日系ホテルでは、宴会ゲストを含めた大勢のゲストがパブリックスペースのロビーを通過する。“宿泊滞在する”ゲストのお世話をするコンシェルジュ本来の業務をホテル側が把握し、考慮しているかどうかが、デスクの位置でうかがい知れる。
ゲストの心の声を聴きながら、勇気をもってより良い提案を
ある日の夕刻、ベルに案内され、一組のゲストがデスクを訪れた。ビジネスで来日のご夫婦で、東京には数回来ているがその他の地域には行ったことがない。ご夫婦がそろう一日だけのお休みの相談であった。電車好きのご主人ができるだけ長く新幹線に乗りたいと、東京福岡間の一日往復新幹線の切符を注文された。僭せん越ながら、そこでただの御用聞きではいられないのがコンシェルジュ。予定を伺うと福岡駅周辺で2 時間滞在し昼食だけ食べて帰ってくると言う。片道6 時間。車窓からの景色を楽しむも飽きてしまわないか。福岡でも特別な目的もないと言う。ご希望を伺った後、勇気をもって提案をしてみた。福岡に行く途中の素晴らしい街々をご紹介するも、短時間の「のぞみ」の旅では満足できない。京都、大阪でなく、“HIROSHIMA“という地名にお二人の表情が動いた。早速スケジュールを組み直し、日帰りでの広島駅周辺と少し足を延ばした宮島厳島神社をご案内し、翌々日からのビジネスに影響がないように帰京の時間を計算し、切符手配を受注した。お二人もすっきりした気持ちで夕食にお出掛けになった。
その後ご主人のメールに切符購入完了の報告と、英語の広島観光案内サイトを参考に添付し送信。購入した電車の切符とその詳細情報、各駅の案内、タクシー利用時ドライバーへの案内カードとその他メッセージなど万全の準備をし、翌日早朝の出発時にゲストに渡せるようフロントに託した。