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第17 回 公益社団法人国際観光施設協会編  観光施設メディアラボ 

第17 回 ホテルの安全・安心8 駅における安全性の要件

【月刊HOTERES 2016年09月号】
2016年09月23日(金)
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適切な維持管理の重要性
 
 駅で使用する建材は総じて言えば耐久性の高い材料を採用していますが、経年劣化による不具合や想定以上の使われ方をされる場合なども多く、設計段階で配慮することはもちろん、適切に維持管理を行なっていくことが重要です。
 
 特に弱点となる部位の一つとして、床のエキスパンションジョイント(以下EXP.J)が挙げられます。駅はエレベーターや旅客通路などの増築を行なうことが多く、結果的に異なる構造体同士をEXP.J で接続する箇所が多く存在します(写真1)。
 
 駅コンコースは多くのお客さまが行き交うだけでなく、重量のある商品等を運搬する台車なども往来します。同じ時期に設置したEXP.J であっても、特に通行量が多い箇所はジョイント材の歪みや固定ビスの抜けなどが生じることも多く注意が必要です。
 
 維持管理は、維持管理を行なう会社が年間計画に基づき、定期的に目視点検を実施し、不具合が確認された場合は交換を実施しています。
 
 その他床材全般に関しては、駅では数㎜の不陸でもお客さまが転倒してしまうこともあり、日頃から経年劣化の状況を注意して把握しておくことが大切です。

写真1 床 EXP.J

自然災害への備え
 
 2011 年3 月に発生した東日本大震災では、駅コンコース等の天井材が落下する被害が発生しました。法規制面では、2013 年7 月に建築基準法が改正され、新築建築物等における一定条件以上の天井に対して天井脱落対策を講ずることになりましたが、条件に該当しない天井については設計者の判断により安全を確保することとされています。
 
 現在、駅を利用するお客さまの安全確保のため、エリア、規模を定め既存駅の旅客流動部分における天井脱落対策を進めています。特に既存天井については、天井材とは別の下地から支持した部材で天井が損傷しても落下しない措置や既存天井の撤去を実施しています(写真2)。
 
 既存天井の脱落対策では、既存天井裏での施工を伴う場合が多く、天井裏の状況により実施できる方法が限られます。そのため施工方法の検討にあたっては、現地の状況をよく調査することが必要となります。


写真2 天井脱落対策

安全から安心へ
 
「安全とは、不安全でない状態を保ち続けること」という定義があります。これは、安全というものは非常に脆いもので、将来起こりうるさまざまなリスクを想定し、対策を講じ続けなくてはならないという解釈を私はしています。
 
 そのためには、設計から施工、維持管理に至るそれぞれの段階で、常に最善と思われる対処を行なうことが必要であり、その不断の取組みの積み重ねがあって初めて安全が確保できるものと考えます。
 
 駅は1 年365 日、休みなく営業を続ける過酷な建物です。また近年では、災害発生時の一時滞在場所としての役割も担っており、求められる安全性のレベルは高まってきています。安全の先にある「安心できる駅」を目指して、これからもさまざまな取り組みを推進していきます。
 
 今回ご紹介した要件が、他の観光交流空間への参考になれば幸いです。

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