福永 常に時代に向き合い社会のニーズに応えるとともに、時代を先取りして改革をし続けてこられたのですね。最近はビューティーではまつげエクステへの関心も高まっていると聞きますが、そちらの道を目指していきたいという学生さんも増えているのでしょうか。
岩崎 おっしゃる通りで年々、まつ毛エクステを施す「アイリスト」を目指す希望者が増えています。その要望に応えるために平成28 年度に公益社団法人日本理容美容教育センターの「まつげエクステ認定校」を取得しました。27 年度のアイリスト就職者は6 人(前年1 人)でしたから、認定校となることで今後ますますアイリストとして輩出できる卒業生の数は増えていくことでしょう。美容国家資格に加えてアイリストの資格取得を得ることで、就職の幅が広がりますし、社会に貢献できる美容界の人間として活躍できるチャンスが生まれます。将来、結婚や出産をしても手に職をつけることで働き続けることができます。安定した幸せな家庭を築くためにも、学校側の努力でできることは学生の能力を引き出していくことだという気持ちで取り組んでいます。
福永 それは学生さんにとっても親御さんにとっても恵まれた環境でしょうね。自身のやる気次第でチャレンジでき、さまざまな知識や技術を習得できます。
岩崎 教員たちも学生に対する面倒見が良いことも当校の特長です。仲良くという意味ではなく、個々の学生が抱えている問題や悩みなどにきちんと向き合い、解決法などをアドバイスしています。加えて先輩、後輩、つまり1 年生、2 年生の交流も活発にするためのイベントなどを行なっていますので、1 年生は抱えている問題を2 年生の先輩に相談をしたり、2 年生は先輩の立場で後輩に教えていくという指導力を自然と身につけることができます。1 年生は高校生を対象としたイベントを通して、後輩たちに伝えることができます。学校内でコミュニケーションを活発にすることで、校内の活気があふれます。学校へ行くことが楽しいと思えるようになるムードを作ることも学校を運営する側の責任と感じております。
福永 専門学校の多くは1 学年の年齢が同じですから、同じ1 年生でも4 年生の大学とは少し異なり、年上の人と会話をする機会が少ないということから、コミュニケーションを積極的に取れる場を学校が提供しているのですね。ウエディングプランナーの接客においても、晩婚化になるほどに新婦の年齢も上がりますし、親御さんが介入するケースもあります。同じ年齢ではない人たちと仕事をしなければならない中、学校でコミュニケーションの大切さを自然な流れで教えていらっしゃることは対人の仕事においては欠かせないことですね。
岩崎 健康であることも大切です。学生の多くはアルバイトをしていますので、アルバイトと学校の課題で睡眠不足、その上、コンビニエンスのお弁当やジャンクフードばかり食べていたら栄養バランス的にも良くありません。そこで300 円で食べられるお弁当を校内で販売し、食べられるようにしました。栄養面も考慮していますし、食事を通してコミュニケーションがより活発になります。お昼休みには校内放送も行なっています。学生たちのアイデアで作成し、さまざまな情報を発信しています。昨年、学校長に着任してすぐにトイレの改修も行ない、快適に使用できるよう改善しました。より多くの学生に学校へ来ることを楽しいと感じてもらえることで、一人ひとりの個性を一層引き出せるチャンスが生まれると信じています。
福永 校内放送や学校側が学生のためにお弁当を用意してくれるなど、本当に学生さんのことを思っているからこそ、実現できることですね。アルバイトをしなければ学んでいけない環境や、アルバイトや親元離れているため食生活が不規則になる学生さんにとってはありがたいことですね。
岩崎 厳しい家計の状況を踏まえ、この状況を少しでも緩和できればと、今年1月「一般財団法人岩崎ともみ奨学財団」を立ち上げました。
福永 それはどのような財団ですか。
岩崎 経済的事由による職業教育を受けるための就学が困難な学生に対する奨学金の給付および貸与や、奨学金の支給を受ける学生に対する生活指導および助言、公益財団法人化に向けた整備を柱にしています。他界して1 年が経ちましたが、母であり2 代目の学校長だった岩崎ともみは“どうすれば人は喜ぶか、どうすれば教育を通じて社会貢献できるか”を常に考えていました。“優れた資質を持ちながら、経済的事由により職業教育を受けるための就学が困難な学生のために奨学金を給付する財団を設立したい”という遺志を引き継ぎ、設立したものです。
福永 それは素晴らしいことですね。経済的事由により本来はかがやくべき才能を放てない人もいることでしょう。本人の意思ではない理由で断念することは、社会、企業にとってもマイナスになりますね。
岩崎 持続的な教育機会の提供を目的とし、奨学生に対する職業実践的な教育を通じ、国家の成長を担う人材育成に寄与することが、次世代を作り上げ輩出していくことを第一としているこの奨学財団と本校の使命でもあります。奨学金制度を活用し、一人でも多くの学生にかがやいてほしい、幸せに成長していって欲しいと思うばかりです。学生が幸せと感じられる居場所を学校内に作ることが私たちの役目です。居心地の良い居場所を作り出すためには、金銭的な不安を解消したり、ハード面の改装をしたり、全学年でコミュニケーションを図れるイベントや学校行事を実施したりなど、すべきことは多々あります。今、家庭や社会で自身が休まる居場所を見失っている若者が増えています。孤独な環境はさまざまな問題を引き起こします。そうならないためにもどこかに居心地の良さを感じる居場所を作ること、個性や技術を伸ばせる資格取得や研修などの受け皿を作ることなのです。
福永 学生さんたちに真摯に向き合い、本当に幸せになってほしいと思われている学校長の思いが伝わります。改めて楽しく居心地の良い職場環境や学校環境作りの重要性を実感しました。本日はありがとうございました。
学校法人岩崎学園
横浜fカレッジ
学校長
岩崎有紀子 氏
㈱フェイス 代表取締役
福永有利子 氏
レストラン・ゲストハウスのウエディングプランナーから各現場の管理職としてマネジメントを担い、確実に業績を伸ばしてきた。2003 年にウエディングプランナー養成スクール講師をはじめ、06 年より大学にて非常勤講師として教壇に立ち、現在も教鞭を執っている。06 年堂島ホテル婚礼部長に就任、その後08 年同ホテル副総支配人に昇任。09 年には㈱フェイスを設立し、代表取締役に就任。現在は、ホテル・ゲストハウスを主に成約率向上を目的としたトレーニングや集客戦略立案・実践支援などのコンサルティングに加え、ウエディング全般にわたる支援を行なっている。著書・ウエディングプランナーじゃない、アカンのは上司や! 悩める管理職のアメムチ19 の育成術