「彼を知り己を知れば百戦殆あやうからず」、有名な孫子の兵法の一つである。現代において経営者はコンペティターの動向を把握し、営業マンは営業先の現状把握が必須。時代は変われど、「相手を知る」という本質は変わらない。2015 年週刊HOTERES は、人脈マッチングスペシャリスト、TOP CONNECT ㈱代表取締役 内田雅章氏をファシリテーターに、企業存続のノウハウや秘訣を探るべく、トップ企業経営者との対談を実現。第12 回は、㈱日本M&A センター代表取締役会長 分林保弘氏に登場いただき、ホテルへの期待と、これからの経営者のあるべき姿について伺った。
中小企業と雇用を守る
㈱日本M&A センター
内田 ㈱日本M&A センターの歴史と背景についてお聞かせください。
分林 日本では毎年数万の企業が倒産や廃業・休業に追い込まれていますが、中小企業における理由の実に7 割ほどが、後継者問題にあると言われています。それに伴い雇用の喪失が数十万人。新聞やニュースなどでも時々取り上げられていますが、この問題は技術や伝統の消失にもつながる憂うべき出来事です。私自身はもともとイタリアに本社を持つコンピューターメーカーの日本法人勤務をしており、仕事を通じて後継者問題に直面。問題の解決にはM&A が非常に有効な手段であると考え、1991 年に友好的なM&A の仲介業を専門で行なう㈱日本M&Aセンターを設立しました。設立にあたっては税理士・公認会計士をはじめとする多くの方々からの支援を受け、東京を中心に北海道から南九州まで50 社から事業をスタートさせました。この規模の同時オープンにはいつも驚かれますが、25 年前すでに人口の出生率は1.4 人しかなく、若者の減少や問題の深刻化は明白。事業の全国展開こそが急務だと考えたからです。
内田 後継者問題に直面から設立までのきっかけはなんでしょうか。
分林 コンピューターメーカー勤務時代、会計事務所のコンピューター化を担当することになりました。当時はバブル後期で、会計事務所には中小企業から保有する株の相続税に関する相談が相次いでいた状態。その問題を解決すべく、システム化や相続税対応に特化した組織の設立・運営を行なっていました。すると、そこに所属する多くのクライアントから「後継者がいない」という声を聞くようになりました。それらの企業の状態を見てみると、独自の技術や高い可能性を秘めた組織が数多く存在しており「何とかこの人たちの力になりたい」、そういった想いを抱くようになっていったのです。
内田 会計事務所と中小企業の関係について少し教えていただけますか。
分林 一般的な意見から申し上げますと、企業に代わって経営にかかわる専門的な経理処理や税務申告を行なうことが、会計事務所の役割です。しかし私はそういった役割だけでなく、孤独の中にいる「経営者」という存在の、唯一の相談機関でもあると思いますし、会計事務所とは経営者にとって、そうあるべきだと考えよく周囲にも発信しています。