2024年10月23~26日、大阪で「IGLTA 世界総会 2024」が開催される。IGLTAとは、International LGBTQ+ Travel Association の略語で、「LGBTQ ツーリズム」の普及のために1983年に創立されたNPOだ。今回の世界総会はアジア初開催となり、約700名の会員の来日が見込まれるという。ここでは、開催の目的や概要、日本での「LGBTQツーリズム」の現在について、共同ホストを務める大阪観光局の牧田 拡樹氏、立石衣利子氏に聞いた。
取材:武田雅樹 文:笹間聖子
世界80カ国から会員が集いLGBTQ+旅行の情報を交換 商談会や展示会も
昨今は「LGBTQ+」という言葉を日常的に目にするようになり、性的マイノリティの存在は広く認められるようになった。しかし欧米に比べると、日本ではまだ社会、環境の対応が遅れていると指摘されている。そのためLGBTQ+当事者からは、「日本を旅してみたいけれど、偏見にさらされないか」と不安な声も。そんな人々に向けて、「大阪が LGBTQ+に友好的な都市である」とメッセージを発信することを目的に開催されるのが「IGLTA 世界総会 2024」だ。IGLTA は世界約80カ国、2400以上のメンバーを持つ「LGBTQ ツーリズム」の普及を目的にしたNPOだ。LGBTQ+ 対応の教育をはじめ、土地や旅の調査を行ない、当事者に向けて安心安全に過ごせる都市情報を発信している。その総会は年に一度、会員約 700 人が結集し、情報発信を行なう貴重な場だ。
総会の内容としては、日中は IGLTAの活動報告やデータ発表などのセミナーに加えて、LGBTQ+に向けた商品、サービスを持つバイヤーやDMO、サプライヤーを対象とした商談会、展示会も開催する。今回は日本の商品やサービスを目掛けて海外バイヤーが訪れるため、ビジネスチャンスも大きいという。さらに、夜はレセプションパーティーや、LGBTQ+ ツーリズムに関する教育や研究への募金収集を目的としたチャリティディナーも行なわれる。総会全体のホストは、大阪観光局、㈱JTB、LGBTQ+ の対応研修やマーケティングを行なう㈱アウト・ジャパンが共同で担当。ホストホテルは、IGLTA に加盟しているスイスホテル南海大阪だ。
ちなみに、この世界総会がアジアで行なわれるのは 41 年の歴史で初めてのことだという。一体なぜ誘致できたのだろうか。
大阪観光局が IGLTA の存在を知った時期は 2017 年に遡る。大阪市が観光 DMO を取得した年だ。観光をデータに基づいて戦略的に売り出す体制となり、その際、欧米の富裕層集客のための施策として浮かび上がったのが LGBTQ+への働きかけだった。「それなら IGLTA というNPO があり、メンバーになれば情報が得られる」と耳にした大阪観光局 牧田 拡樹氏は、早速カナダで行なわれた総会を視察。集客につながると強いメッセージを感じて加盟を決めたと振り返る。
当初は情報収集のみを行なっていたが2020 年、総会誘致を一念発起。ただ、総会ホストに選ばれるためには、大阪が「LGBTQ ツーリズム」に向けて土壌を整え、その取り組みをアピールする必要があった。そこで大阪観光局は、賛助会員向けにセミナーや研修を行なったり、覆面調査を含む、個別の研修パッケージプランを提供。その一方で、DMO で初めて LGBTQ+ に特化した WEB サイト「VISIT GAY OSAKA」を立ち上げ、パッケージプランを受けたホテルやゲイバーを「LGBTQ+ フレンドリーなスポット」として掲載した。これらの地道な活動が実り、2023年3月、大阪での開催が決定したのだ。LGBTQ+ に友好的だと言われているタイとスペインという強豪を押さえての決定だった。