■ポイント
実りある人材育成において、とても大切なことは、“ 研修” を受講させることだけではありません。“ 研修” でとても大切なことは、その研修内容や手法ではなく、リーダーはその“ 研修” に向けた各人の姿勢や環境をつくることがとても重要です。
リーダーがスタッフを研修に送るに際して、行なわなくてはならない行動を、いくつかまとめてみましょう。
- “研修”の内容や手法における習得知識に期待するのではなく、その研修に参加するスタッフの思考プロセスに着目し、その後の変容を支援する。(インプット聴講型よりアウトプット体験型の研修を)
人材の育成において大切なことは、知識のインプットだけではありません。一番、大切なことは、そのスタッフ自身が“ 変わる” ことにあります。それは決して、インプットだけでは不可能なことです。人は誰でも他人に言われたり、教えてもらっただけでは、変わることはできません。しかし、自分自身で導き、気づき、体感したことについては、忘れずに納得して、自分自身を変えようと行動するものです。つまり、他者から教えようとするのではなく、スタッフ自身に自力で気づかせ、答えを出させようと導くことが、育成においては重要です。また、研修後のフォローもとても大切になります。
② “研修”は日常の中にある“当たり前”や“常識”を見つめ直したり、俯瞰して再考する最高のチャンスである。
研修は、ついついインプット重視で、新しく未知の発想や思考法を望んだりしがちだが、むしろその逆で、日常に潜んでいる“ 当たり前” や“ 常識”、“ ふつう” のことを見直したり、再考し、深化させ、その気づきを生かしていくことも、大きな成長につながります。人材の育成において大切なことは、全く新しい風を吹かせることよりも、これまでの空気を新鮮で快適な空気に入れ替えることも重要です。
③ スタッフを受けさせ、変容させることも大切だが、そもそもの研修担当者をリフレッシュさせることも重要。
意外とよくあるケースが、このパターンです。スタッフ以前に、研修担当者の“ 変わろう” とする意欲がなく、ただただルーティンの作業として、形だけの“ 研修” を選出し、実施しているところも目立ちます。
育成において、大切なことは“ 当たり前” からの脱却にあります。そのため、“ 研修” 自体を見直すことも大切なことです。そのためにも、研修担当者の“ 当たり前” も見直すために、研修担当者自身の思考や傾向も再度、見直しを図り、リフレッシュが必要です。
■解決結果
ウォルト・ディズニー氏は、人材育成において、“He lives in YOU.”と言いました。つまり、“ 答えは、君の中にある” ということです。そのため、ディズニーの人材育成においては、一人一人に“ 指示” はありません。そしてまた、“ 正解” もありません。ただあるのは、各人が“ 自ら” 考え、気づいた結果の“適解” の日々の連続にあります。そしてそれらを日々、導き出させるチャンス(機会)を創ることが、リーダーの大きな役割の一つであると言いました。
近年、企業や組織では、ついつい変革や革新を急ぐあまりに、新しい知識や画期的な手法を導入しようと試みる場合も少なくありませんが、ぜひ、リーダーは、日常の“ 当たり前” や“ ふつう” に潜んでいる“ 現場” からの各人の気づきに着目し、各人が自らの答えを導き出せる環境とその支援を行なうよう心掛けてください。
組織では、他人に指示、命令されたり、促されたりして、行動していますが、本来、人が一番熱心に、思いをこめて行動する始点は、自分自身が考え、導き出した答えに発するものです。自分自身で導き出した答えこそが、一生涯忘れることなく、各人のくくりや幹となっていきます。それを創ることができる環境の一つが、“ 研修” であり、リーダーのあなたがその参加をジャッジできるのです。
大住 力(おおすみ・りき)
ソコリキ教育研究所 所長
公益社団法人「難病の子どもとその家族へ夢を」代表
東京ディズニーランドなどを管理・運営する㈱オリエンタルランドで約20 年間、人材教育やプロジェクトの立ち上げ、運営、マネジメントに携わる。退社後、「ソコリキ教育研究所」(研修・講演・コンサルティング)を設立し、前職での経験を生かして、人材育成プログラムを企業などに展開している
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