突然の一報
ある朝、勤務中に1 通の電報が届いた。その内容は「(当時ウェスティンホテル社長の)エドワード・カールソン氏が京都国際ホテルに宿泊しているので、すぐに連絡をとってほしい」というもの。だが、連絡するとカールソン氏は電報を打った覚えはないが、私の名前は聞いたことがあるという。ロータリークラブ仲間のナップさんが、私のことを伝えていたからである。
その電話でカールソン氏は「今から予定が入っているので、夕方6 時にホテルロビーで会おう」と言い、電話を切られてしまった。当時は1962 年、瀬戸大橋も新幹線もない時代のことである。高松から京都まで連絡船と電車を乗り継いで、7 ~ 8 時間かかるため、夕方6 時に京都のホテルに着くには、すぐに出発しないと間に合わない状況であった。だが、当時は新入社員として銀行に勤めている立場。自分のわがままが許されるはずもないし、そんなお金もない。カールソン氏に断りの電話を入れようと思い、上司の課長に事情を話したところ、「断るにしても直接会って伝えたほうがいい」「出張扱いにするから今から行ったらどうか」「人生は一度しかないのだから会ってから決めてもいいのではないのか」と、くしくもナップさんと同じ趣旨のことを言われたのである。
このあと、最終的に京都に行くことになる。これを機に、上司への報告・連絡・相談(ホウレンソウ)は常に行なった。当たり前のことだが、社会人としての最低限のマナー。カールソン氏に会う前に、社会人としてのマナーや立場を知る上でも大いに役立ったことを忘れていない。つづく。
第2回
平尾彰士の「出会いの不思議な力」 ~人生を変える出会いは誰にでもある~
第2 回「エドワード・カールソン氏との出会い(中編)」
【月刊HOTERES 2015年12月号】
2015年12月04日(金)