ビジネスの多くの成功者が、年を重ねて思うことがある。「今の自分があるのは、あの時、あの出会いがあったからだ」と。日本人で初めて、スターウッドホテル&リゾート日本・韓国・グアム地区社長に就任した平尾彰士氏。本連載を通して、平尾氏が経験したことをもとに、次世代の経営者や若いホテリエにメッセージを伝えていく。
シアトルのホテルで研修
(1963 年~ 1965 年)
1963 年4 月1 日に大学生活をスタートと同時に、4 月半ばころからウェスティンホテル本社があるオリンピックホテル(現フェアモントホテル)で2 年間の私の研修が始まった。最初の仕事はレストランのバスボーイで、お客さまにパンや水を出したり、皿を引いたり、後片付けをして新しいテーブルセッティングをするのが主な仕事である。非常に単純な仕事だが、それを簡単だと思ったのが私の大きな間違いであった。本来なら3 カ月で各セクションを移動することになっていたのに、なかなかその指示が出ずに焦ったのを覚えている。6 カ月経ったころやっと次の場所であるメイン・キッチンに移るように言われた。その時レストラン・マネージャーと話す機会があったので、何故6 カ月もかかったのか聞いたところ、驚きの答えが返ってきた。
「君は仕事を言われた通りやっていたけど、最初から熱心に仕事と向きあっているようには見えなかったし、顔にスマイルが全然なかった。しかしこの1 カ月前から君の態度に余裕があり、積極的な行動の変化が出てきたので、次に移る準備が出来ていると判断し、上司に進言したのだ」本当のプロの一言であった。